はじめまして。中野円佳と申します。『「育休世代」のジレンマ』という本を昨年9月に出版し、今回、このような連載を持たせていただくことになりました。この連載では、私自身の経験や育休世代前後の声を基に、日本の企業社会の課題や原因を探っていきたいと思います。
『「育休世代」のジレンマ』という本は私が育児休職中の2012~2013年に書いた修士論文を基にしたものです。
この本は、15人の総合職女性へのインタビューから構成したものです。分析を通じて浮かび上がってくるのが、「男女平等に競争し、勝ち上がっていく意欲があった女性ほど、子どもができるとかえって辞めている。辞めずに続けやすいのは、ある程度仕事への意欲を引き下げて、ゆっくり働ける人」という事実です。
先輩女性たちの苦労と努力により、今、30代前後の高学歴女性は子どもを産むまでは、男女平等をある程度、当たり前に享受することができます。そうして、男性並みに働いて成果を出すのが当然と信じるようになった「マッチョ志向」の女性たちは、出産すると、次のようなジレンマに陥ります。
①働きやすさよりもやりがいを重視してハードな職場を選び、②自分と同じくらいハードワークな夫と出会って結婚するために、育児と仕事の両立が回らなくなってしまう――。
彼女たちは、世帯収入などの面ではある意味で恵まれた層でもあります。そのため、出産後に長時間働けなくなったなどの理由で、やりがいのない業務に異動させられてしまうと、「子どもを預けてまで」必死で働く意味がわからなくなります。そうなると、いっそ“競争”自体から降りてしまおうと、その会社を退出するか、管理職にはならなくていいというふうにモチベーションをうまく下げて残る人に分かれていきやすいのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら