安倍首相、千葉の自民女性県議はゼロですか? なぜ統一地方選で有権者離れが進むのか

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ところが、時々の風で当選した議員が、次回は当選しやすい党に躊躇なく移籍する。市区町村議員は表向き無所属での出馬を選択する候補者も多いが、ほとんどは既成政党とつながりがある。それでも身分が優先する。だが、有権者は、こうした行動に失望して離れて行っていると感じる。

さて、四つ目である。三つ目を受けて、投票率が落ちてきたことだ。結論を言ってしまったが、有権者は、政党を移るたびに離脱した政党は「見間違い」で、今度の所属政党がすばらしいと平気で訴える候補者に幻滅している。

政党政治色がますます濃くなり、地方においても候補者個人の魅力を知らせる努力が足りず、投票行動に結びつかない。その程度の候補者ばかりでも、候補者が少なく魅力のない議員が増えることで、有権者離れが起こる。

なぜ女性議員は増えにくいのか

最後の五つ目は、女性議員がいっこうに目に見えて増えないことだ。安倍首相が、女性の社会進出をぶち上げ、国政においては女性大臣の登用を掲げているにもかかわらず、現時点での女性の割合は12%を下回る。注目は千葉県会議員。同県の自民党の女性議員は40年余り一人もいなかったが、今回の統一選挙でも女性候補は出ない見通しで、「安倍看板」に偽りありといわれても仕方ない。

女性の場合、一般社会でも地位の向上が求められるように、社会的な地位やそれに伴う自由になる金銭も男性に比べると厳しいのが現実だ。政党によっては、女性候補への資金援助も検討されているが、こと地方においては、厳しいようだ。

戦後になって、それまで男子だけや税金を納めているものに限られていた時代から、成人なら誰でもが投票できる普通選挙になった。今から思えば驚きであろう。

だが、それから参政権、投票の権利をありがたいものに感じない時代になっている。婦人参政権運動に尽力した市川房枝氏の「権利の上に眠るな」という叫びが聞こえそうだ。随分前だが、衆院選でわずか24票差での落選のケースがあった。「誰がやっても変わらない」と思わせる議員も問題だが、「私が入れても変わらない」という有権者の考えも問題である。

有馬 晴海 政治評論家

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ありま はるみ

1958年 長崎県佐世保市生まれ。立教大学経済学部卒業。リクルート社勤務などを経て、国会議員秘書となる。1996年より評論家として独立し、テレビ、新聞、雑誌等での政治評論を中心に講演活動を行う。政界に豊富な人脈を持ち、長年にわたる永田町取材の経験に基づく、優れた分析力と歯切れのよさには定評がある。ポスト小泉レースで用いられた造語「麻垣康三」の発案者。政策立案能力のある国会議員と意見交換しながら政治問題に取り組む一方で、政治の勉強会「隗始(かいし)塾」を主宰し、国民にわかりやすい政治を実践している。主な著書に「有馬理論」(双葉社)、「日本一早い平成史(1989~2009)」(共著・ゴマブックス)「永田町のNewパワーランキング100」(薫風社)、「政治家の禊(みそぎ)」(近代文芸社)など。

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