地方創生は安倍政権の大きなテーマですが、別に安倍政権とは関係なく、みなさんも素朴な疑問をお持ちではありませんか?そもそも、これまでも歴代の政権はいろいろな地域活性策を打ってきたはずですが、なぜこうした活性策は、ことごとく失敗してきたのでしょうか。
ひとことでいえば、時代に合わなくなった昔の組織を温存したうえで、政策を実行しているからです。つまり、インターネットも高速道路も新幹線もなかった時代、明治維新政府が樹立したような都道府県・市町村というツリー構造を温存したまま、情報を集めて、その情報をもとに政策を立てて、都道府県・市町村を経て民間に実践させるからです。
このような旧来型の組織構造では、問題が次から次へと加速度的に細分化して深刻化する今の時代には、課題解決を図るのは不可能です。
都道府県単位での社会構造は、すでに崩壊している
私は県庁所在地を「明治維新利権」と冗談で言っています。というのも、各都道府県単位に行政拠点をおいて、それぞれを管理する仕掛けは、事実上崩壊しようとしているからです。
従来は、その都道府県ごとに置かれた県庁所在地に、官庁だけでなく、都道府県単位での民間企業の支店やら営業所やらの中枢が置かれ営業活動をしていました。つまり、行政も産業もそこに集まり、名実ともに県庁所在地がその都道府県の中心部であるという時代がありました。
しかし、これも1970年以降は中心部にあった県庁や市役所も郊外に移転、さらに新幹線と高速道路が開通したことで「民間企業の支店などは複数都道府県で1つずつ」、といった形で統廃合されています。もはや、「都道府県単位でうんぬん」というのは事実上、地域をコントロールできるわけでも、地域の中心部であるわけでもなくなってしまっています。
例えば、山形市は完全に高速道路によって仙台市に組み込まれてしまっていて、行政拠点の近くに民間が47都道府県全部に支店や営業所を置くという時代は、すでに終焉を迎えています。新幹線によって、これは東北全域に見られ、ますます影響は強まるばかりです。
東北だけの話ではありません。こうした構造は、九州であれば福岡市に、中部であれば名古屋市にと、業務機能から商圏さえもどんどん統合されていっています。国の出先機関さえ北海道、東北、関東甲信越、中部などで1つずつなのですから、実質的に都道府県ごとでできることは、どんどん少なくなってきています。
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