原発5基廃炉の裏で蠢く「倍返し」の新増設 日本原電は敦賀3、4号増設へ働きかけ強化

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日本原電の敦賀原発1号機は廃炉決定、2号機も廃炉の公算が大きいが(撮影:共同)

老朽化した原子力発電所5基の廃止措置(廃炉)が決まった。3月17日に関西電力が美浜1号機(運転開始1970年11月)と2号機(同1972年7月)、日本原子力発電が日本最古の敦賀1号機(同1970年3月)の廃炉を決定。翌18日には九州電力が玄海1号機(同1975年10月)、中国電力が島根1号機(同1974年3月)の廃炉を決めた。いずれも運転開始から40年前後が経つ老朽原発であり、2013年7月施行の改正原子炉等規正法で定められた「原則40年の運転期間」ルールの初適用となる。

各社としては、「最長20年の運転延長」という特例措置を狙う道もあった。しかし、特例が認められるには、厳格化された新規制基準に基づく原子力規制委員会の審査にパスする必要があり、大規模な追加設備投資や長期にわたる工事でコストがかさむ。対象の5基は出力が34万~56万キロワットで原発としては小規模であり、運転延長しても経済的に見合わないと判断した。

加えて、各社の廃炉判断を後押ししたのが、経済産業省が3月13日に施行した廃炉会計制度の見直しだった。従来の会計制度では、廃炉を決断した際には資産の残存簿価を一括で費用計上する必要があり、電力会社の財務が一気に悪化する可能性があった。それは円滑な廃炉を妨げるとして、経産省は残存簿価を10年間で均等償却する制度に変更。毎年の費用は従来どおり、電気料金に転嫁できる仕組みとした。電力会社の負担が大幅に軽減され、廃炉の決断を下しやすくなったのだ。

大型老朽機は20年運転延長狙う

こうした国の特別支援もあって実現する5基の廃炉。これまで日本で廃炉を完了したのは試験用の小型原子炉だけで、商業用原子炉では日本原電の東海発電所と中部電力の浜岡原発1、2号機がそれぞれ1998年、2009年から廃炉作業中にある。また、事故を起こした東京電力・福島第一原発の1~6号機も廃炉作業に入っている。つまり、これまでの廃炉決定は合計14基。国内に残る原発は43基だ。

では、今後も運転40年を迎える原発から順次廃炉が進むかというと、そうとは限らない。現に関電は17日、高浜1号機(運転開始1974年11月)、2号機(同1975年11月)、美浜3号機(同1976年12月)の20年運転延長を目指し、再稼働へ向けた審査を規制委に申請した。いずれも出力が82.6万キロワットと廃炉決定5基に比べて大きく、3基合計で3100億円の安全対策費用を投じたとしても経済性が十分見込めると判断したという。

 また、日本原電は運転開始から36年経った東海第二発電所(運転開始1978年11月、出力110万キロワット)の再稼働に向け、2014年5月に規制委審査を申請している。審査に合格すれば、いずれ運転延長も申請する見込みだ。関電も、運転開始から35年以上経つ大飯1号機(同1979年3月、117.5万キロワット)、2号機(同1979年12月、117.5万キロワット)の審査申請を準備中にあり、やはり20年運転延長も視野に入れている。

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