2030年、再エネ比率は30%ラインの攻防へ 経産省の有識者委員会で電源構成を議論

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電源構成においては、安定的な電源である地熱発電(写真は九州電力の八丁原発電所)、バイオマス、水力などの開発も必要だ(サーフ/Imasia)

経済産業省が1月末から有識者委員会で議論している「2030年時点の望ましい電源構成(エネルギーミックス)」。3月10日の第4回会合では再生可能エネルギー(以下、再エネ)がテーマとなり、経産省の事務局が30年における再エネの「導入見込み量」の試算を示した。

経産省の再エネ比率22%は最低線

その試算(発電量ベース)によると、地熱発電が98億キロワット時(既導入量は36億キロワット時)、水力発電が953億キロワット時(同809億キロワット時)、バイオマス発電が286億キロワット時(同177億キロワット時)、太陽光発電が700億キロワット時(220億キロワット時)、風力発電が未公表(同47億キロワット時)となる。

太陽光については各電力会社の現在における接続可能量を基に機械的に試算したもの。また、風力については環境アセスメントの手続き中もしくは環境アセス終了後で運転開始前の案件が91億キロワット時、洋上風力の計画が24億キロワット時あるが、環境アセスや系統制約で導入量が大幅に減る可能性があるとして試算値を明示しなかった。仮に風力のみ既導入量を用いて再エネ全体の導入見込み量を合計すると2084億キロワット時(同1289億キロワット時)となる。

経産省は2月27日の第3回会合において、30年時点の省エネ対策前の電力需要全体を1兆1440億キロワット時と試算し、さらに省エネ対策で2067億キロワット時(全体の約18%)を節電することで9373億キロワット時にできるとの見通しを示している。12年度の電力需要9680億キロワット時を3.2%下回る水準だ。この9373億キロワット時を分母とすると、再エネの導入見込み量2084億キロワット時は22.2%を占めることとなる。

14年4月に安倍晋三内閣が閣議決定した第4次エネルギー基本計画では、30年における再エネの電源構成比について、10年に策定された第3次エネルギー基本計画での目標(21%)を上回る水準としている。22.2%という比率は、その目標を何とか満たす水準といえる。しかし、目新しさを感じさせるような高い水準ではない。風力の導入見込み量も入っておらず、あくまで最低線の参考値にすぎない。電力需要全体についても、省エネ対策前の見通し(経済成長前提)が高すぎる、省エネはもっと推進可能といった見方もあり、今後の議論の余地は大きい。

再エネの時代へ「パラダイム転換」が重要

有識者委の委員からも問題視する意見が出た。エネルギー産業論を専門とする橘川武郎・一橋大学大学院研究科教授は「この水準で再エネの最大限導入になるのか。民意や首相官邸の考えからすると弱いのではないか」と疑問を呈し、「30%くらいは目指すべきだ」と述べた。

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