「アメリカの原発は2030年には減少する」 リチャード・レスターMIT教授に聞く
日本だけでなく米国においても、原子力発電はシェール革命の影響や放射性廃棄物処理政策の迷走などで岐路に立たされている。
米国における原子力の技術開発、放射性廃棄物処理、エネルギー業界分析を専門とするリチャード・レスターMIT(マサチューセッツ工科大学)教授に、米国と日本における原子力政策の現状について聞いた。同教授は世界各国の競争力やイノベーションについて研究するMIT産業パフォーマンスセンターの所長も務め、日本の製造業の急成長と米国の製造業の衰退の理由を報告した『メイド・イン・アメリカ』(1989年、共著)はベストセラーとなった。
経済性で原子力が天然ガスより劣勢に
――米国における原子力発電を巡る政策の現状をどう見ているか。
米国では現在、約100基の原子炉が運転中にあり、全電力量に占める原子力の割合は約20%だ。二酸化炭素(CO2)排出の少ない電源に占める原子力の割合は60%強となっている。新しい原子炉の建設は何十年もなかったが、現在5基程度の原子炉を建設中だ。
米国にある既存の原子炉の多くがかなり老朽化しており、規制当局は既設炉の約70%に対して20年間運転を延長する承認を出している。しかし、たとえ運転延長したとしても、2030年ごろから多くの原子炉が廃炉になっていく見通しだ。
最近数年間で5基がさまざまな理由で廃炉になったが、今後2~3年間でさらに数基が廃炉に追い込まれる可能性がある。これは安全性の理由からではなく、主に電力市場の変化によるもので、特に天然ガス価格の低下(ガス火力発電の競争力向上)の影響が大きい。また、風力や太陽光が電源として増えて、卸電力価格が低下したことも影響している。
米国の政策について言えば、原子力の重要性は気候変動対策やCO2削減という政策目的において認識されている。早期廃炉の対象になりやすい原発には、それを未然に防ぐ対策が行われ、緊張関係も生じている。一方で、長期的なCO2削減目標に向けて原発の重要性が認識されているのにもかかわらず、まだ明確な政策が打ち出されていない。いまだ解決策が見いだされていない放射性廃棄物処理の問題も課題として残っている。
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