グレッグ・A・ルービンスタイン氏はGARアソシエイツ(ワシントンを拠点にしている日米安保、とりわけ防衛技術協力を専門にする顧問企業)のディレクターで、この分野では30年に渡ってワシントンのトップエキスパートとして知られる一人でもある。
ルービンスタイン氏は日米防衛問題の専門家として国務・国防両省で12年間勤務し、そのうちの7年間を日本の米大使館で過ごした。1993年以降は、国防次官のアドバイザーとして、日本の防衛プログラムにおける買収、技術、物流分野を担当した。シカゴ大学、コロンビア大学で学位を取得し、上智大学でも学んだこともある。今回、ルービンスタイン氏に日米防衛協力のための指針(ガイドライン)見直しに関する課題を聞いた。
政府がそっとしていれば日本は平和?
――先のイスラム国による日本人拘束・殺害事件において、日本の世論は安倍首相を支持しました。しかし、安倍首相の外交姿勢がイスラム国に刺激を与えたのではないかとの声もあります。
想定されたことです。多くの日本人が抱いている幻想は、「政府がそっと静かにしていれば、日本を攻撃する理由は誰にもないはずだ」と思っていることです。自衛隊を前線に送る場合にも、決して武力行使をしてはならない、というのが、今でも一般的な認識でしょう。
今回、イスラム国の捕虜となり殺害された2人の日本人についても、イスラム国支配地域に向かった彼らの行動自体が世界に対して迷惑をかけたのだと考え、その責任を問う日本人が多いのです。
――捕虜殺害によって、政策の変化は考えられますか。
目に見える政策にそれほどのインパクトはないでしょう。しかし、国際的な情報機関との関係には、静かに影響が現れると思います。特殊捕虜救出能力にも注目され、その場合には自衛隊ではなく警察を使うでしょう。つまりドイツのGSG-9(1972年夏に起きたミュンヘンオリンピック事件の結果として構成された連邦警察の一ユニット)のようなものです。
――日本人捕虜の殺害事件は「日本の9.11」を意味していると思いますか。
その表現は、すこし誇張しすぎです。今回の出来事が、安全保障への懸念の見方に影響は与えることは間違いありませんが、日本でのインパクトはより漸進的で、控えめになるでしょう。
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