庶民こそマイナンバーカード普及に賛成すべきだ なぜわざわざ「大金持ちの脱税」を助けるのか

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こうした政治家にベーシックインカムの原理がわかる程度の教育を施すよりも、マイナンバーカードで個人・家計の経済状況を把握して適正な「差額」に相当する額を給付する仕組みを作るほうが、政治的に実現しやすく、現実問題として早いかもしれない。

給付と所得や資産の制限についてあれこれ議論できると政治家は嬉しいかもしれない。余計な時間をかけないようにお願いしたいが、気の済むまで議論するといい。

マイナンバーで金融口座に紐付いた個人と家計のデータが存在することで、「庶民」は柔軟な条件で且つ迅速に給付金を受け取ることが出来る。その財源の多くを負担するのは相対的に「お金持ち」だ。

行政の効率化も「庶民」に得な経済効果

これは、正しい「再分配」の姿であろう。脱税したいお金持ちは現金を持とうとするから、しばし日銀券流通残高が増えて、耐火金庫が売れるかもしれない。これに対しては、今後、徐々に現金が使いにくくなるような仕組みを増やすといい。

もともと現金の扱いにはコストがかかる。また、現金は(とくに高額紙幣は)不正な取引の温床だ。大臣室などで現金を受け取った記憶がある政治家もいるはずだ。

加えて、昨今では現金の衛生面での問題も指摘されている。すでに意識の高い(?)小売店では、店員が現金を触らずに済むように、現金払いの客は機械に現金を入れる仕組みが導入されている。店員は、客が取り出す現金に対して、汚い物を見るような目をしながら、それを機械に入れるように指示する。現金払いに手数料を追加する仕組みを導入するに十分な理由は、すでにある。

また、将来金利が上がれば、現金は金融口座に吸い寄せられるはずだ。かくして、マイナンバーには益々多くの情報が集まるようになる。直接の商業利用はできないだろうが、この情報をどう使うかで国全体の効率が変わる。

日本が益々「遅れた国」にならないためには、金融口座の紐付け義務化まで進めて、マイナンバーの持っているポテンシャルを最大限に発揮できるようにするべきだ。医療、年金、税金、などでバラバラに情報を管理して、個々にシステムを作るようなやり方は、ITゼネコン数社に商売を配分するにはいいかもしれないが、国として非効率的だ。

行政の効率化もマイナンバーのポテンシャルの1つであり国民が本来得るべき経済効果だ。「マイナンバーが普及することで、どのコストがいくら削減できるのか?」を国民は大いに問うべきだ(例えば日本年金機構について)。

すべての金融口座への紐付け義務化まで進めてマジメに使うなら、マイナンバーカードが普及することの経済効果は大きく、「庶民」にとって得なものになるはずだ。大いに後押しをしようではないか(本編はここで終了です。次ページは筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

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