AppleWatchの質感、実は高級機械式を凌駕 著名時計ジャーナリストが大絶賛

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筆者自身はApple Watchを、腕時計寄りではなくデジタルガジェット寄りの製品だと捉えている。しかし、実際に触れると、そうした確信が揺らぐことは前述の通りだ。

なぜ揺らいだのか。それはApple Watchの質感が想像していた以上に優れたもので、”ガジェット”といった括りには、とても入れられない製品と感じてしまったからだ。

AppleWatchの素材にはスタンダードモデルであるステンレス版(日本での販売価格は税別6万6800~13万2800円)、スポーツモデルである軽量のアルミニウム版(同4万2800~4万8800円)、そしてゴールド版(同128万~218万円)があるが、いずれのケースも質感が非常に高い。曲面ガラスとの合わせも極限まで詰められている。

ステンレス版の質感は50万円以上の機械式に相当

では広田氏は、Apple Watchの質感について、どのように感じたのだろうか。

「ステンレス版、ゴールド版の質感は素晴らしいものですよ。鏡面に磨いたステンレスケースの質感は、50万~100万円クラスの高級機械式時計に匹敵するでしょう。鏡面に浮かぶ自分の姿を見れば、表面が設計通りの滑らかさを保ち、微妙な凹凸がないことがすぐにわかります。裏面まで一体となったケースデザインも、他の腕時計には例を思い浮かべることができません」

このように、かなり評価が高い。アップルはマシニングセンターで削り出した後、同様の研磨装置で正確に磨く行程をデモビデオで見せた。同じような手法はタグホイヤーなどいくつかのメーカーがすでに導入しているとのことだが、Apple Watchの価格帯でそれを実現するのは驚異的だという。

「アルミケースのApple Watch Sportsも、価格からすれば高精度に作られており、質感も悪いわけではありません。しかし、腕時計は常に肌と接触し、汗に触れる製品です。汗と反応しやすいアルミケースは、これまで多くの一流時計メーカーが挑戦してきましたが、どのメーカーも腐食の問題を克服できませんでした。一方、もしアルミケースの腐食問題をアップルが解決しているのであれば、まさに快挙。すばらしいことです」

アルミケースに関しては経年変化を懸念する。しかし、それを除けば”腕時計としての”Apple Watchに対してはポジティブな印象ばかりを持ったようだ。

「ダイヤルの操作感、押し込んだボタンのクリック感なども適切で質感をさらに高めていますが、曲面ガラスとケース曲面のつながりの良さ、チリの合わせ込みがスゴイですね。この外観、ケースの質感は、あまりにも高すぎます。もちろん、”中に入っているもの”が違うため、機械式腕時計と単純比較はできません。しかし、50万~100万円ぐらいの機械式時計の中には、Apple Watchよりも質感が低いものもあります。今後、Apple Watchの品質に多くの方が触れるようになると、顧客が求める質感の水準が一気に上がってしまう可能性があります。そうなると、腕時計メーカーはもう一段、品質を上げていかねばなりません」

アップルのハンスオンイベントに展示されたAppleWatchシリーズ(音量にご注意ください)

実際にApple Watchを腕に装着して感じるのは、その装着感の良さだ。とりわけ感激したのが、レザーループとミラネーゼループだ。これらは柔軟性の高いバンドをループ状に引いてマグネットで留める設計になっている。無段階調整が高い上、柔軟性の高いバンドの特性もあってピッタリと腕にフィットする。

さらにレザーループならば、金具が完全にベルトの裏に隠れるため、そのままパソコンをタイプしても、パームレストに当たって不快に感じることがない。そこまで考えて、ループ状のベルトデザインにしたのか否かはわからないが、ともかく装着感は驚くほどいい。

腕時計の歴史に存在しなかったマグネットバンド

しかし、腕時計の長い歴史の中で、こうしたバンドの設計はなかったのだろうか。

「ありません。なぜなら、マグネットは機械式腕時計に悪影響を与えて狂わせるからです。ではクォーツの腕時計は?となりますが、クォーツでも磁気は厳禁で、近づけただけで狂います。このため、アップルが採用した磁石を使ったバンドは、そもそもが発想として出てこないのです。おそらくですが、アップルは時計業界がマグネットを使った留め具を使わないこと、その理由も理解した上で、マグネットに影響を受けないApple Watchのバンドに使用して装着性面での差異化をしようとしたのではないでしょうか」と広田氏。

実際、ハンズオンイベントに来場している、腕時計関連のジャーナリストや評論家たちは、口々にその装着感の良さに感嘆の声を上げていた。筆者ももちろん、装着感の良さを感じたわけだが、おそらく世界中にある多くの高級時計メーカーの中には、もっと良い装着感を提供する製品がたくさんあるのだろうと思っていただけに、腕時計の専門家たちの声に驚いたが、なるほどマグネットが一般的な時計には使えないところが大きな違いなのかと気付かされた。

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