太陽光に"27円"の逆風、バイオマスには追い風 再生可能エネルギーの新価格案でどう変わる?

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太陽光発電所の施工を請け負う業者の幹部は、「36円から32円になって受注が激減した。27円になったら消滅するかもしれない」と嘆く。

太陽光の価格はFIT開始当初の12年7月に40円、13年度も36円と高く設定されたため、ファンドや外資も入り乱れる発電所建設ラッシュが起きた。税引き前の内部収益率(IRR)5~6%の適正利潤に、優遇期間中は1~2%を上乗せするのが政府方針だが、実際にはより大きな収益を得ている事業者も多い。

投資目的の太陽光は激減か

だが、14年度からは価格が32円へ低下。加えて、大規模設備を意図的に小規模に分割して、本来の安全規制や機器設置費用を逃れる分割(分譲)案件が禁止された。その結果、13年度末に36円案件の駆け込み需要が激増。九州電力など5社が接続を“保留”するという問題に発展した。

九州など日照条件がよく地価も安い地方では、すでに送電線への接続量が限界に来ており、新規参入は困難になった。そのうえ価格が27円に下がると「事業のうまみはなくなる」(関係者)。工場の屋根や住宅に設置する自家消費の需要は残っても、リターン目当ての投資需要は激減が必至。足元はなお豊富な受注残を抱えるパネルメーカーも、新規受注の先細りに備えた対策が急務となっている。

ただ、前向きに考えれば、太陽光の買い取り価格低下は普及によるコスト低減が進んだ証左でもあり、電気料金への上乗せは一段と縮小する。また、出力がより安定した、他の再エネへの投資が活発化する可能性がある。

植田委員長は「小規模の未利用木質バイオマスを別区分化(新設)した意義も大きい」と話す。価格を高めに設定したことで、間伐材などの資源の有効利用や雇用増大などを通じ、地域の活性化に寄与することも期待できる。

FITに規制緩和やインフラ整備も併せてバランスを取りながら、再エネを最大限導入できるような、官民の取り組みが今後は重要だ。

「週刊東洋経済」2015年3月14日号<9日発売>「核心リポート05」を転載)

中村 稔 東洋経済 編集委員
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