2点目は、なんといっても商品のアピール力だ。高級品購買層にはまだ大塚家具は強みを発揮している。問題は、中間層だ。筆者のような「良い家具にこしたことはないけれど、ニトリでじゅうぶん」という正直な感想をもつ購買層は、他社に逃げていった。実際に、イケアやニトリ、そしてカッシーナといった同業他社が好調の中、大塚家具は低迷にあえいだ。
もちろん異論をお持ちの方もいようが、筆者の周りに聞いてみると大塚家具に優位性を感じているひとは少なく、「高そう」「店員さんがくっついてくるのがイヤだった」「いつもすぐ引っ越すから安くていい」「いまいち良い家具かわからなかった」という本音が出てきた。もちろん高尚な議論もできるだろうが、なによりもマスイメージとして競合他社に後塵を拝したのが大きいように思う。
たとえば、大塚家具の過去5年分の決算書を見てみると、意外にも粗利益率は変化しておらず50%台で推移している。厳密ではないが、この粗利益率は売上高から仕入価格を引いたものだから、販売価格が劣るようになったとはいえまい。それよりも、販売数それ自体の落ち込みと、新規顧客を獲得できていないことに問題がある。
個人技に頼るか組織で対応するか
3つ目は、お家騒動のことだが、勝久会長と久美子社長ではおそらく会社経営の考え方に大きな違いがある。大塚勝久会長は家具が好きで、家具に合わせて家を替えるといい、さらに誰も勝てないほど家具バイヤーとして一流だった。すなわち、その卓越さゆえに、ワンマンにならざるを得ない側面があった。
一方の大塚久美子社長からすると、上場企業である以上は、個人技ではなく組織として広く外部から声を聞ける体制づくりが急務だった。勘よりもデータ。創業一族よりも専門家。取締役に弁護士やマーケティングのプロや、金融機関出身者などを揃えたのは、その意図のあらわれだろう。実際に、大塚家具は勝久会長と邁進してきた「60代が多く、50代の社員は数えられるくらいしかおりません」という(雑誌「企業会計」2013年Vol 65号)。
市場環境の変化によって中間消費者層を競合他社に奪われ、創業者個人で引っ張ってきた組織のゆがみが露呈した。こう考えると、まるで大塚家具だけではなく、いくつもの日本企業で共通している内容だ。大塚家具を舞台にしたお家騒動は、日本のあちこちで起きていることを象徴しているように思えてならない。
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