アマゾンとウォルマートの勝負を分ける重大要因 DXからサービス・プラットフォーム化の段階に

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ウォルマートとアマゾン
「ECかリアルか」という壁もだんだんなくなってきています(写真:Brent Lewin、Bing Guan/Bloomberg)
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どんな企業にも宿敵やしのぎを削るライバルがいます。さまざまな業界の垣根も取り払われていく中で、かつてはなかった競合関係も生まれています。そんな「ガチンコ好敵手」の勝負の分かれ目を追う連載第3回をお届けします。

アメリカ小売業界の2強の座にあるアマゾンとウォルマート。同じ小売企業といっても、出自は大きく異なる両社です。

いち小売企業であるウォルマートに対し、アマゾンは周知のとおり世界有数のテクノロジー企業であり、デジタル・ネイティブ企業でもあります。あらゆる商品を扱う「エブリシングストア」であるばかりか、クラウドサービスのAWSによって巨額の利益を上げているデータ企業でもあります。その意味でアマゾンとは、「ウォルマートとマイクロソフトが1つになったような企業」といっても言いすぎではないでしょう。

さらには自前の物流網(フルフィルメント by Amazon)を持つ物流企業でもあり、広告事業を展開するメディア企業でもある。時価総額においてウォルマートがアマゾンに大きく水をあけられているのはそのためです。

しかし小売に限ってみれば今なおウォルマートは世界最大の小売企業です。EC全盛の時代にあってアマゾンに押され、一時は「もう時代遅れ」と揶揄されたウォルマートですが、その後DX(デジタルトランスフォーメーション)に成功し、業績を伸ばしています。

今回は、小売企業としてのアマゾンとウォルマートを比較し、勝負の分かれ目を考えます。

EC事業が急伸するウォルマート

世界最大の小売企業ウォルマートは、エブリデイ・ロー・プライス(EDLP)が代名詞です。特売を廃止、年間を通じた低価格を押し出すことで世界中の消費者に支持されてきました。

(外部配信先では図表などの画像をすべて閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でご覧ください)

スーパーアプリとしてのWalmartアプリ

ここ数年は店舗のみならずEC事業の伸びが鮮明です。とりわけコロナ禍における成長はチーフカスタマーオフィサーのジェイニー・ホワイトサイド氏が「5年分の成長をわずか5週間で達成」と語るほど。オンライングロサリーが急増し、ストアピックアップと配送サービスが300%もの成長を見せたのです。また3密回避需要を受けて、キャッシュレス機能搭載のアプリが消費者に浸透。同アプリによって「アプリで注文」「店舗で受け取り」の流れが加速しました。

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