人間の仕事を奪う「変革的AI」のおそるべき実力 プロ並みの写真や絵を生成、文章まで書ける

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その一方で、AIは加速度的に進化しているとし、進化のさらなる加速を望む技術楽観論者もいる。彼らはAIの進歩が加速すれば、病気を治したり、宇宙を植民地化したり、気候変動の壊滅的ダメージを防いだりできる新たな道具が手に入ると信じている。

私は、そのどちらかに味方しろと言うつもりはない。ここで言いたいのは、こうした論争に拍車をかけているリアルで具体的なAIの進化にもっと注意を払うべきだ、ということだ。

やり取りの相手がAIか人間かわからなくなる

何しろ、実際に機能するAIは実験室を飛び出していく。Facebookの表示順序を決定するアルゴリズムやYouTubeのおすすめ機能、TikTokの「For You」ページに至るまで、私たちが日々使っているSNSアプリにもAIは組み込まれている。軍で使われる武器や、子どもたちが授業で使うソフトも同様だ。銀行はAIで与信判断を行い、警察も犯罪捜査にAIを使っている。

仮に懐疑論者が正しく、AIが人間レベルの意識を獲得するのがはるか先のことだったとしても、GPT-3やラムダ、ダリ2のようなシステムが社会で強い影響力を持つようになることは容易に想像がつく。

数年後には、私たちがインターネットで目にする写真や動画、文章の大半がAIによって生成されたものになっている可能性だってなくはない。やり取りしている相手が人間なのかロボットなのかを見極めるのも難しくなり、オンラインでの交流が奇妙で不安なものになっていく可能性もある。

テクノロジーに詳しい人間がAIをプロパガンダに利用し、ターゲットを絞り込んだ偽情報作戦を大規模に展開、政治プロセスがこれまでになかった形でゆがめられる展開も考えられる。

AI業界では「AIの危険性について社会的な議論が必要だ」という言葉が決まり文句のように繰り返されているが、そこに欠けているのは、現在のAIには実際に何ができるのか、AIがもたらす具体的なリスクやチャンスは何か、といったことを価値判断抜きでニュートラルに話し合う方法だ。

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