人間の仕事を奪う「変革的AI」のおそるべき実力 プロ並みの写真や絵を生成、文章まで書ける

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ダリ2は今年発表されるや大きな話題を呼んだが、それも当然といえる。驚くべき技術であり、イラストレーター、グラフィックデザイナー、写真家など、画像を扱って生計を立てている人々の人生を左右しかねない。

同時に、このようにAIが次々に生成する画像によって、合成画像によるプロパガンダ、超写実的なディープフェイク、本人の同意なしに作成されるポルノが急増する事態への懸念も高まっている。

科学研究で分子生物学者をぶっちぎる

AIの長足の進化は、アート分野にとどまらない。

例えば、つい5年前にAI業界で最も大きなニュースとなっていたのは「アルファ碁」だった。グーグルのディープマインドが作成した深層学習モデルで、世界トップの囲碁棋士を打ち負かすことができた。AIをトレーニングして囲碁の大会で優勝できるようにするというのは、余興的な面白さはあったが、ほとんどの人が関心を持つような種類の進歩とは必ずしもいえなかった。

ところが昨年、アルファ碁から派生したディープマインドの「アルファフォールド」が、真に偉業と呼ぶべき成果を成し遂げた。アミノ酸の1次元配列からタンパク質の3次元構造を予測するようトレーニングされた深層ニューラルネットワークを用いることで、数十年にわたって分子生物学者たちを悩ませてきた「タンパク質フォールディング問題」をほぼ解決してしまったのだ。

今年の夏、ディープマインドはアルファフォールドによって、存在が知られている2億種類のタンパク質のほぼすべての構造を予測できたと発表した。医学研究者が今後何年にもわたり新薬や新たなワクチンの開発に役立てることのできる、まさに宝の山というべき成果である。『サイエンス』誌は昨年、アルファフォールドによる予測の重要性を認め、これを2021年の「科学における最大の画期的成果」の第1位に選出した。

テキスト生成能力の動向も注目だ。

ほんの数年前まで、AIのチャットボットは初歩的な会話さえ苦戦するほどで、より複雑な言語ベースのタスクについては、お話にならないレベルだった。

しかし今では、オープンAIのGPT-3をはじめとする大規模な言語モデルが、脚本の執筆、マーケティング用の電子メール作成、テレビゲームの開発などに用いられるようになっている(私も昨年、本紙、つまりニューヨーク・タイムズ向けの書評の執筆にGPT-3を使ったことがある。そのことを事前にほのめかしていなければ、編集者はAIを使って書いた記事だということに気づかなかったはずだ)。

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