「トヨタ生産方式」は、ほぼ誤解されている

企業活動の失敗は8~9割が自業自得だ

トヨタ生産方式でつくられる最量販車種の「プリウス」(撮影:今井 康一)
「トヨタ生産方式が誤解されている結果、多くの企業が成果を出せずにいる」と説く。『トヨタ生産方式の逆襲』(文春新書)を書いたエフ・ピー・エム研究所代表取締役の鈴村尚久氏に聞く。

──「トヨタ生産方式(TPS)」という言葉が好きでない、とあります。

もともと大野(耐一)さんやおやじ(鈴村喜久男氏)たちは「トヨタ方式」と呼んでいた。最初は「スーパーマーケット方式」と言っていた。当時は、トヨタ社内でもほとんどの人が知らなかった。ある役員に説明したところ、「生産工学の一種だな」ということで「“生産方式”と後ろにつけなさい」と言われて、トヨタ生産方式となった。これはおやじから聞いたことです。

トヨタ生産方式が成立した頃はトヨタ自動車は「工販」に分かれていた。「工業」は「自販」が注文してきた分しか造ってはいけないし、自販を通してしか売ってはいけない。生産に専念するしかなかったから、「トヨタ式=トヨタ生産方式」で間違いなかった。

でも、生産方式と名付けられたことで工場だけの考え方というイメージが浸透してしまった。本来の意味が忘れ去られ、在庫を持たないかんばん方式や工場の現場でストップウォッチやビデオ撮影で作業時間を減らす作業改善だけが、トヨタ生産方式だと思われるようになった。

作業改善や生産工学は一面でしかない

──この本を読むと、作業改善や生産工学はTPSの一面でしかないことがよくわかります。調達や営業のパラダイムシフトの重要性に紙面を割いています。

鈴村尚久(すずむら・なおひさ)●1952年生まれ。京都大学法学部卒業、トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。経理部、第2購買部、産業車両部、生産調査部、販売店業務部、国内企画部に勤務。97年退職。99年エフ・ピー・エム研究所を設立。父・喜久男氏(故人)は「トヨタ生産方式」の生みの親・大野耐一氏の右腕だった。

TPSの生産工学では右に出るものがいなかったおやじが、「生産、物流、営業の全部が協力しないと会社はうまく回らない」と言っていた。自分がコンサルティングをやってみるとわかる。

生産現場に問題があれば、直さないよりも直したほうがいい。でも、そこだけよくしてもダメ。生産がまずいのは営業がまずいからということはよくある。逆に、営業がまずいのは生産がまずいからということも。企業は一体なのですよ。右手だけを鍛えたってダメで左手も鍛えないといけないように、生産を変えれば売り方も変えないとうまくいかないことが多い。

──ジャスト・イン・タイムというと仕入れのカイゼンのイメージがありますが、顧客を待たせない、即納の体制作りが重要で、その実現のために営業、物流、生産、調達を変えていく。

本書ではフォークリフトや建設資材での実例を出していますが、即納体制を作り上げれば売れます。それも他社より安くなくても売れる。

──どこまで行っても未来が見えない以上、次にどの注文が来るかはわからない。即納なんて無理では。

わからないからこそ、『スティング』という映画のようにゴールインしてから馬券を買えばいい。ストアを設けておいて、出荷した分だけ切れないように造る。これは後から補充する分だけ造るから後補充というのですね。こうすればゴールインしてから馬券を買うことになる。

──ストア在庫は持ってもいい。

そうですね。

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