今年後半に通貨ユーロは下落から上昇へ反転 欧州リスクをみずほ銀行の唐鎌大輔氏に聞く

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――早くから、欧州の衰退や経常黒字・ディスインフレ・不況下の通貨高などの現象を指摘して、「欧州の日本化」、「ユーロの円化」と表現していましたね。

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「欧州の日本化」「ユーロの円化」「ECBの日銀化」を著書でいち早く指摘。

現状は、日本よりもさらに厳しいと思う。日本は不況に対して財政出動で対抗してきた部分があるが、欧州は財政政策が封じられ、金融政策のみの1本足打法。

しかも、金融政策も19カ国の寄り集まりなので、量的緩和には様々な制約があり、十分ではない。原油価格が上がらない限り、物価は上がらないのが実情だ。ドイツが経常黒字を稼げないほどに通貨ユーロが強くなるということはなく、弱い国々が稼げるようになるほどユーロは弱くならない。

日本では経常黒字が通貨高につながり、それで黒字が減った。しかし、ドイツの経常黒字はこのままだと永遠に減らない。そしてそれは通貨ユーロの地力の強さにつながる。通貨が域内経済に対しては調整役を果たさないという問題点がある。

ユーロ経済圏の需給の緩みは大きい

――原油安は欧州経済全体にはプラスですね。

原油安それ自体は内需を喚起するのでプラスだし、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁もそう認識している。また、1月分に関して言えば、マイナス0.6%の消費者物価上昇率のうち、原油安の寄与分がマイナス1.0%ポイントであることを考えれば、昨年10月31日の日本銀行のように、その数字だけで、何か政策を打つということはない。

だが、ユーロ圏の問題は、需給のスラック(緩み)が相当に大きいとみられることだ。エネルギーと関係のない財の物価上昇率もマイナスになっている。日本の経験を踏まえれば、デフレ圧力が賃金にまで及んでくるおそれがある。日本の場合も2000年代に入って賃金に跳ね返ってきたことが問題となったため、今後は、賃金の動きが注目点だ。欧州の雇用制度の硬直性は問題視されることが多く、これからいっそう悪化するおそれがある。

リーマンショック後の09年6月~10月も、需要の急激な落ちこみと原油価格の下落で消費者物価上昇率はマイナスに転落していたが、当時はコアCPIが1.0%近傍あった。いまはその半分しかない。リーマンショックの後に財政出動を行ってきた日米と違い、債務危機に陥ったことによって緊縮財政を余儀なくされた。そのため慢性的な需給ギャップがあるとみている。

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