今年後半に通貨ユーロは下落から上昇へ反転 欧州リスクをみずほ銀行の唐鎌大輔氏に聞く

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過去の円安との違いは、2つの構造的な要因

――円高に戻ることはない?

今の円安とかつての円安とでは大きな違いがある。第1に日本が貿易黒字国でなく貿易赤字国になり、輸入企業の円売りが大きくなったこと。第2に、一応インフレになり、すなわち実質金利が大幅なマイナスになったこと。これらは構造的な円安要因であり、過去の円安のような投機要因ではない。

ただ、昨年は、放っておけば円安になりますよ、という構造変化だけを説明すればよかったが、今年はこのメインシナリオと異なるリスクが膨らんでいる。

一つは原油安により、貿易収支が改善し、一時的には黒字化する月も出てきそうということだ。本当にそうなれば、投機筋が材料視するだろう。もう一つは、大きなリスクで、政府としてこれ以上の円安を容認しないという方針転換があり得ることだ。例えば1月には甘利経済再生担当相が日銀の追加緩和を牽制するかのような発言をしている。同様に黒田日銀総裁も言い回しが慎重になってきている。

ただ、日本銀行が金融緩和を縮小するほどの180度の方針転換はアベノミクスの敗北を意味するので、そこまでには至らず、せいぜい、物価目標の期限を延長する程度だと思う。その際、1ドル=110円割れと言ったドラスティックなことにはならないが、「2年という期限の曖昧化」などがなされた場合、130円を目指すところまでいかず、120円そこそこで推移するにとどまるということは有り得る。

米国の利上げ決定は9月のFOMCとみている。FRBは否定するが、最初の1回が始まれば、結局は市場の予想しやすい定期的なペース(measured pace)で利上げせざるを得ないだろう。だとすれば、最初の利上げには慎重にならざるを得ないはずで、早くても9月という見方である。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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