ロッテも逃れられない「韓流お家騒動」の宿命 韓国で難題山積の中、副会長が突然の解任

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東京・新宿区にあるロッテ本社ビル

韓国の証券業界では「第2ロッテワールドをはじめ、最近の韓国の不祥事を見かねた宏之氏が、独断で韓国側の経営も掌握しようとしたのではないか」という見方が出ている。

一方、あるロッテ関係者は「兄弟が日韓でうまくすみ分けていた経営体制に亀裂が生じるようなことを宏之氏が行おうとした事実がわかり、武雄氏の逆鱗に触れたのではないか」と推測する。

第3国の統治体制が懸案だった

大韓民国が建国されてから半世紀余り、サムスングループなど同国の経済成長を支えてきた財閥は、創業者から2代目、あるいは3代目へと代替わりの時期を迎えている。だが、国内景気は冴えず、経済のエンジンである財閥の経営も楽観できる状況ではない。

ロッテの場合、日韓両国に収まる範囲の事業展開なら、これまでのような兄弟による分割統治でも問題はなかっただろう。が、ロッテは現在、事業先を東南アジアなど第3国にも積極的に広げている。こうした地域の経営を誰が担当するのか、「つねに頭を悩ます問題でもあった」(前出のロッテ関係者)。

しかも、事業規模が大きい韓国で昭夫氏の経営を脅かすような事象が起きていた。「兄としては、弟に任せてはいられないと、家族の情が出てしまったのではないか」との指摘が韓国では一般的だ。

解任という荒っぽい手法を用いたものの、長男追放によってロッテは経営の新たなステージに入ったことになる。それでも、事業規模が大きい韓国ロッテの眼前にある問題が解消したわけではない。相次ぐトラブルで客足がすっかり遠のいた第2ロッテワールドの写真が韓国メディアで紹介されるなど、ネガティブイメージは残ったまま。まずは足元の火種から消すことが急務となりそうだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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