KDDIはなぜ「ガラホ」を今、売り出すのか ガラケー魂は死なず!「AQUOS K」開発秘話

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KDDIで開発を担当したプロダクト企画本部長の小林氏(右)とプロダクト企画本部マネージャーの高橋氏

一方のシャープも、ケータイユーザーに調査を重ねる中で、LINEのスタンプが使えなかったり、友人から送られてきたURLが見られなかったりと「端末が時代の変化に対応できていない面が浮かび上がってきた」(グローバル商品企画センター戦略企画部長の中田尋経氏)。

ケータイにこだわるユーザー向けに新しい端末を提供したい。シャープの提案を基に、KDDIは共同で新しいケータイ端末の開発に乗り出すことを決めた。

「この商品の開発は怖かった」――。KDDIの小林昌宏プロダクト企画本部長は振り返る。ターゲットはケータイのよさを知り、日頃から使いこなしている30~50代。少しでもそのメリットや使い勝手を犠牲にすれば、見向きもされないおそれがあった。

スマホの操作に慣れきった開発陣は、社内に眠っていた古いケータイを引っ張り出し、開発に臨んだ。「忘れかけていた操作の感覚を思い出しながら開発していった」(プロダクト企画本部の高橋宏明マネージャー)。

基本性能の充実を重視

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タッチクルーザー機能では、テンキー部分を指でタッチすると、画面上のポインターを動かせる(撮影:尾形文繁)

まず重視したのは、基本的な機能を充実させることだった。たとえば、電池のもちは待受時間で最大610時間(25日超)、連続通話時間も620分(10時間超)と、従来のケータイを上回る水準にした。

カメラも画質の強化だけでなく、被写体に合わせて撮影モードを推奨する機能をつけた。タブレット端末と併用するユーザーを想定し、テザリング(端末をモバイルルーターとして周辺機器をネットにつなぐ)機能や連携するためのアプリも盛り込んでいる。

課題となったのはWebサイトなどの閲覧だ。KDDIチームはなるべくテンキーで操作できるようにこだわったが、世にあふれるサイトやアプリに対応を促すことはできない。KDDIのサイトですら対応していなかったほどだ。どうすれば片手で楽に操作できるのか。悩んでいたところにシャープが提案したのが「タッチクルーザー」だった。

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