KDDIはなぜ「ガラホ」を今、売り出すのか ガラケー魂は死なず!「AQUOS K」開発秘話

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カラーバリエーションは3色。それぞれテンキーのデザインが異なっている

テンキー部分をパソコンのタッチパッドのように指でなぞり、画面上のポインターを直感的に操作できる機能だ。画面のスクロールもできる。テンキーで操作するところからタッチ操作へスムーズに移行できるよう、使い勝手を重視して調整を重ねた。

こうした工夫の一方で、スマホの代表的な機能は割りきっている。タッチパネルの採用も議論されたが、片手での操作を優先したことや画面サイズの制限から取りやめた。これによって、グーグルのアプリマーケット「グーグルプレイ」が非対応となった(別途、専用のアプリが20数種類使える)。

シャープも以前、タッチパネルを搭載したモデルを投入した経験があるが、「無理やり搭載したために操作感が悪くなった。今回はその反省を生かしている。スマホではなく、ケータイの進化という観点から開発した」(通信システム事業本部長の長谷川祥典氏)。

端末の検証作業も、いつにも増して慎重に進めている。KDDIは年配の社員にチェックを依頼し、彼らのフィードバックを積極的に取り入れた。こうして“スマホ発想”ではなく、ケータイとしての使い勝手にこだわった端末を完成させた。

混戦市場でどう戦うか?

AQUOS Kは2月下旬の発売予定(価格は未定)。KDDIはシリーズとして投入する構えだが、発売を前に、期待と不安が入り交じっている状況だ。「ガラホでもいいということになれば大きくシフトするかもしれないが、まだ最終判断はしていない。ユーザーの声を聞きながらラインナップを決めていきたい」と田中社長は語る。

最近ではアンドロイド端末の性能が大幅に向上し、成熟段階を迎えているため、斬新な端末を生み出すのは年々難しくなっている。だが、そうした状況でも「少しでも他社と差別化を進める」というのが田中社長のポリシー。今後もターゲットを絞った商品投入を加速する方針だ。

3月にはドコモやソフトバンクなど、ライバル他社が携帯電話と光回線のセット割引で追随する。異業種からも格安スマホへの参入が相次ぐなど、国内の携帯市場はこれまで以上に混戦模様だ。その中でも「ケータイユーザーならKDDI」と顧客を囲い込めるか。ガラホの販売動向は今後の戦略を占ううえで、重要な試金石となりそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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