退職続出?無理な女性登用にご用心! ヘッドハンターを雇う会社まで出現

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キャリア採用していないのに、管理職を打診して混乱

その会社には女性管理職が数人しかいなかったのですが、新卒で女性社員を3割近く採用していました。ところが、入社8年目あたりまでに結婚、出産して退職するのが暗黙のルールになっていました。ゆえに、女性社員は管理職にならない前提の人材を採用してきました。いわゆるキャリア志向の女性は採用してこなかったのです。ところが、女性の活躍推進をするため、経営陣が女性管理職を全体で2割以上に増やすことを、数値目標に掲げてしまいました。そこで、人事部が

・入社6~7年目の女性社員
・社内評価が高い
・マネジメントに長けている

という人材に対して、「女性管理職として活躍してほしい」と打診しました。当人からすれば、晴天の霹靂。結婚して辞めることを前提に仕事を頑張ってきただけなので、管理職を目指す打診はうれしいものではありませんでした。結果として打診された女性社員は早々に辞表を出してきました。「私には無理です」との回答。もし、管理職への期待がなければ、数年は活躍してくれたことでしょう。

そして、同じように打診した女性社員は大半が困惑して退職、ないしは仕事に対して意欲を下げる機会になってしまったようです。

また、別の会社では女性役員がゼロであったため、社外取締役として外部から数人の女性に要請。現在では役員会参加メンバーで2割が女性になりました。ただ、その女性が役員会で

「私がいた前職の会社ならありえないこと。即座にルールを改訂すべき」

と会社の実情から懸け離れた意見を連発。混乱を来す状況になってしまいました。

本来であれば、外部の視点から辛口の意見をしてくれることは、社外取締役として重要な役割。ただ、現場上がりの男性役員だけで運営してきた役員会には、刺激が強すぎる面もあるようです。当初は「女性の視点で会社を改革してほしい」と打ち出していた社長も、後悔している様子。

このように拙速に女性を指導的な立場で登用、しかも、それなりの人数を登用するとなれば、トラブルが起きる可能性があります。女性が指導的な立場で活躍できるような土壌として

・男性役員(ないしは管理職)にダイバーシティ的視点の醸成
・女性社員に対して指導的な立場になるキャリアの提示

など、覚悟を決めた投資が必要です。拙速に推進せずに、時間をかけて土壌を築くべきでしょう。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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