地方の中小企業でママ2人が進める新規事業 2代目社長、「女性が持つセンスのよさ」に嫉妬

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初野建材工業の初野直樹氏は、創業者の父親から経営を継いだ2代目社長だ(撮影:MARIA)

初野建材工業(埼玉県川越市)は、コンクリートの材料となる砂利や砂を販売する会社だ。国道沿いの本社には、砂利と砂の山が高く積み上げられ、大きなダンプトラックが出入りしている。道路や下水道などの公共工事、民間からの外構工事が事業の大きな柱だが、創業者から会社の経営を継いだ2代目の初野直樹社長が4年ほど前から力を入れている新規事業がある。それが、有害物質六価クロムの浄化剤だ。

下水道工事などに使う再生コンクリート砂には、もともと微量の三価クロムが含まれているが、その三価クロムはセメントを製造する過程で人体に有害な六価クロムに変質し、溶け出してしまうことがある。

このことは、住宅を新築する際の基礎工事において使われるコンクリートにも起こりうる。せっかく購入した自宅が土壌汚染の原因となる可能性があるというのだ。初野社長は東京工科大学の杉山友康教授と共同研究を重ね、この六価クロムを還元する浄化剤を商品化した。2011年のことだ。

新規顧客開拓をどう進めるか

さて、新商品を開発したはいいが、どのように販売を進めていくか。特に、これから自宅を新築する子育て世代の家庭や、新築住宅を多く手掛ける設計事務所に訴求していきたい。これまでかかわりのなかった新規顧客を開拓しなければならない。商品については、あらぬ誤解を生まないよう丁寧な説明が必要だ。「新しい販促手法の必要性を感じたときに思い至ったのが女性の視点を活用するということでした」(初野社長)。

六価クロム浄化剤の営業を担当する関素子さん。英語とイタリア語が堪能な小学生のママだ(撮影:MARIA)

そこで2013年末に、化学品メーカーや旅行会社での勤務経験がある関素子さん(41)を正社員として採用した。初野社長は、ハローワークに出した求人に「子育て応援します」という一言を添えたのだという。関さんは、小学生の子どもを育てるママだ。自宅近くで通える職場を探していたという。「勤務初日に『ダンプトラックに乗ってみますか?』と聞いてみたら『乗りたいです』と言ってちゃんと自分で運転したんですよ。それを見てびっくりしました。これまで建設業界という男社会で過ごしてきたけれど、これなら女性にだって何でも任せられると思いました」と初野社長は言う。

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