パンタグラフを「付随車」に搭載する電車の謎 電動車に搭載するほうが合理的なはずだが…

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2基のパンタグラフを搭載したアルピコ交通20100形クハ20102。連結する電動車のモハ20101に電力を供給している(筆者撮影)

3月25日から営業運転を開始したアルピコ交通20100形。東武鉄道20000型と20050型の中間車を京王重機で改造した2両編成で、今後は年度末に1編成のペースで合計4編成の導入を予定している。

20100形は松本側から1号車モハ20100形(奇数番号)+2号車クハ20100形(偶数番号)で組成。パンタグラフはモハ20100形の松本側に1基、クハ20100の両端に1基ずつの2基搭載している。

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モハのパンタグラフは「霜取り」のため

このうち、モハのパンタグラフは冬期の霜取り用。集電にはクハのパンタグラフ2基を使用する。パンタグラフを2基使用するのはSIV(補助電源装置)への電力を安定して供給するためだとのことだ。

モハ20101にもパンタグラフを搭載しているが、こちらは冬期の霜取り用で集電には使用しない(筆者撮影)

ではなぜパンタグラフが電動車ではなく付随車に搭載されているのか。その一番の理由として考えられるのは、霜取りパンタグラフの搭載位置を松本側にする必要があったということだ。

霜取りパンタグラフはその名の通り、冬期の早朝、架線に付着した霜を取り除くためのパンタグラフ。集電用パンタグラフで霜が付着した区間を走行すると、霜によって離線した発生するスパークで架線を切断する危険性がある。そのため、集電に使用しないパンタグラフで霜を取り除く必要がある。

アルピコ交通上高地線の時刻表を見るとわかるが、初電は新島々駅5時44分発の松本行き(現在は災害の区間運休により渚行き)。そのため松本側に霜取りパンタグラフを取り付けると都合がいいわけだ。

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一方集電用パンタグラフは前述の通り離線対策で2基使用する。そこで霜取りパンタグラフを搭載しない新島々側の車両に集電用パンタグラフを2基搭載することにした。また、クハの種車は東武20000型の中間電動車モハ24800形で、元々パンタグラフ1基を搭載していた車両。そのため屋根から床下への高圧引通しをそのまま利用することが可能だったと考えられる。このようにして地方私鉄では珍しい、走行用パンタグラフを搭載したT車が誕生したといえる。

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