パンタグラフを「付随車」に搭載する電車の謎 電動車に搭載するほうが合理的なはずだが…

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T車に走行用パンタグラフを初めて搭載したのは、1978年に登場した国鉄初の交流特急形電車781系だ。

パンタグラフを搭載した781系のTac車クハ780形。床下には主変圧器も搭載し、相方のモハ781形に電力を供給している(筆者撮影)

781系の走行システムは、すでに北海道で活躍していた交流近郊形電車711系がベース。また、781系の開発期間中に北海道で暫定運用していた交直流特急形電車485系1500番代で好評だった発電ブレーキを走行システムに加えた。さらに特急形として冷房装置を搭載しており、これらをすべてM車(クモハ781形・モハ781形)に搭載するのはスペース的に困難となった。

そこで、主制御器・発電ブレーキ用抵抗器をM車に搭載し、パンタグラフ・主変圧器をTA車(クハ780形・サハ780形)に搭載するM-TAユニットを採用した。なお、TA車のAは交流=AC(Alternating Current)から採られており、TA車は交流関連機器を搭載した電源車という位置づけだった。

新幹線にも事例がある

JR形の交流電車もJR北海道785系やJR九州883系0番代がTA車にパンタグラフを搭載。また、交直流電車でもJR西日本681系・683系がTp車(pはPowerの頭文字)にパンタグラフを搭載してM車に電力を供給している。また、683系2000番代を直流電車化した289系もその経緯故T車にパンタグラフを搭載している。

683系2000番代を直流化改造した289系は、交直流電車時代の名残でT車にパンタグラフを搭載している(筆者撮影)
秋田新幹線E6系はT車にパンタグラフと主変圧器を搭載し、ユニットを組むM車に電力を供給している(筆者撮影)

新幹線も交流電車だが、電動車比率が高いためT車にパンタグラフを搭載したのは300系とE6系だけとなっている。

300系ではTp車に主変圧器を搭載し、前後のM車に電力を供給するM-Tp-M3両ユニットを採用することで重量の平均化を狙った。300系9000番代試作車が落成した当初は全Tp車(3・6・9・12・15号車)にパンタグラフを搭載していた。その後東海道新幹線のき電方式を改良し、ユニット間に特高圧ケーブルを引き通すことでパンタグラフを6・9・12号車に削減。進行方向後ろ側2基のパンタグラフ使用としていた。さらに1995〜1998年に9号車のパンタグラフを撤去している。

E6系も12・16号車のT車にパンタグラフと主変圧器を搭載。12号車は11・13・14号車の3両、16号車は15・17号車の2両に電力を供給している。E6系は在来線サイズのミニ新幹線で床下スペースに余裕がないため、T車に主変圧器を搭載して機器を分散したと考えられる。

次ページ直流電車のT車走行用パンタグラフを搭載する理由
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