オバマ大統領が一般教書で語った真実とは? 事実を「曲げて」伝える日本の大手メディア

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このようなことがしばしば起きますので、アメリカ発の情報は注意してお手数でも原典に当たることをお勧めいたします。

スイス中銀の「恐ろしい決断」の意味

少し落ち着きましたが、先週はわれわれ金融マンの度肝を抜くようなニュースが出てきました。スイス中央銀行が約3年間守ってきた1ユーロ=1.2フランの防衛ラインを撤廃する、と唐突に発表したのです。今後、QE(量的緩和)を発動することでユーロの価値が下がる事を懸念していたワタクシは近い将来あるだろう、とは思っていましたが、おそらく徐々にやるだろう、と思っていたもので、多くの市場参加者と同様、突然撤廃するとは全く考えていませんでした。

これはある種、「恐ろしい決断」と言うことができるのですが、このあたり、解説しておきたいと思います。

スイスは輸出依存度がせいぜい15%もない日本とは違い、完全な輸出立国で、輸出依存度は40%にも及びます。この日本が円安政策で輸出を増やす、と言っているのにはどうにも理解ができませんが、GDP40%も輸出に頼っているスイスにとっては、スイスフラン高によって輸出が減ることは致命傷になります。

従って、スイス中銀は1ユーロ=1.2フラン以上のフラン高になった場合、無制限に介入すると宣言していました。中央銀行としてそれ以上のフラン高には絶対しない、と言う訳です。従って、1ユーロ=1.2フランの防衛ラインに達すると、スイス中銀は無尽蔵にスイスフランを売って、ユーロを買うということになります。

そうなるとこれは何を意味するのでしょう??

そうなんです。元来ユーロが暴落した時はECBがその防衛に回ることになり、ECB自らがユーロ買い・ドル売りなどを敢行するという際どい戦いが繰り広げられる筈ですが、ユーロの場合、そこには常にスイス中銀がいた。

そこまでユーロが売られれば(フランが買われれば)スイス中銀が自動的にユーロ防衛に回ってくれるので、こんなおいしい話はなかった訳です。実際、それを根拠にユーロをロングにしている投資家は結構いたわけです。そりゃそうですよ、最後にスイス中銀が防衛してくれるのですからユーロの下落などしれている、と考えたとしても不思議ではありませんね。

しかし!!

もうこれはやめます、と突然宣言したわけです。つまり、多少スイスフラン高になって輸出が減速しようとも(それによって経済成長を犠牲にしても)これ以上ユーロは買いたくありません、とスイス中銀が宣言した、と言う事なんですね、これは。スイス中銀がもう欲しくない、と言ったユーロ。これは一体どう扱えばいいのでしょうか? ということで市場は大騒ぎになったわけです。

もちろんロシアのこともあるでしょうし、QEによってECB(欧州中央銀行)のバランスシートが劣化し、ユーロの価値自体に疑義が出てくる、という事態も想定されるわけですが、スイス中銀が「持ちたくない」と決断したことは、やはり相応の影響力が出てくるかもしれません。

アメリカとの兼ね合いで言うと、1ドル=1ユーロといういわゆる「パリティー」が実現する可能性すら出てきたと言えるかもしれませんね。今後とも目が離せません。

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