マンガの影響で「マッキンゼー」を辞めた男 高島宏平・オイシックス社長の好き嫌い(上)

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生鮮野菜のネット通販事業を手掛ける高島宏平社長の「好き嫌い」とは?(撮影:尾形文繁)
『DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー』の読者が選んだ「ベスト経営書2014」の第2位にも選ばれた、本連載でもおなじみの「好き嫌い」対談の経営者編は好評発売中。永守重信氏、柳井正氏、大前研一氏など、日本を代表する経営者14人が明かす「戦略ストーリー」の実像。ここでしか読めないエピソードが満載。電子書籍もあります。
 本格的な評伝や自身による回想録を別にすれば、経営者の好き嫌いは、外部からはなかなかわからない。その人の「好き嫌い」に焦点を絞って経営者の方々と話をしてみようというのが、この対談の趣旨である。この企画の背後にある期待は3つある。
 第1に、「好きこそ物の上手なれ」。優れた経営者やリーダーは、何ゆえ成果を出しているのか。いろいろな理由があるだろうが、その中核には「自分が好きなことをやっている」もしくは「自分が好きなやり方でやっている」ということがあるはずだ。これが、多くの経営者を観察してきた僕の私見である。
 第2に、戦略における直観の重要性である。優れた経営者を見ていると、重要な戦略的意思決定ほど、理屈では割り切れない直観に根差していることが実に多い。直観は「センス」と言ってもよい。ある人にはあるが、ない人にはまるでない。
 第3に、これは僕の個人的な考えなのだが、好き嫌いについて人の話を聞くのは単純に面白いということがある。人と話して面白いということは、多くの場合、その人の好き嫌いとかかわっているものだ。 こうした好き嫌いの対話を通じて、戦略や経営を考えるときに避けて通れない直観とその源泉に迫ってみたい。対談の第9回は、オイシックス代表取締役社長の高島宏平さんをお招きしてお話を伺った。

将来は大名になりたかった?

高島:実は、楠木先生の『「好き嫌い」と経営』は、イギリスへ出張に行ったときに読みました。内容が面白くて、それをツイッターで書きました。

楠木:それを僕がリツイートして、今回の対談につながったという次第です。僕が所属している一橋大大学院国際企業戦略研究科は、独自性のある優れた戦略を実践し、その結果として高い収益性を達成・維持している事業を表彰する「ポーター賞」を主催しています。オイシックスは2008年のポーター賞受賞企業です。それもあって、以前から、高島さんとはちょくちょくお目にかかる機会がありました。

高島:今回、こうしてまたお会いしてちょっと意外だったのですが、対談をする場所は普通の場所なのですね。本日は、弊社の会議室ですし。

楠木:はい、だいたいは撮影用のスタジオとか会議室ですね。

高島:本を読むと、楠木先生が経営者の方々の本音を上手に聞き出しているので、どこでやっているのだろう? 飲み屋でやったりしているのかな、とか思っていたもので(笑)。

楠木:そう言われるとうれしいですね。『「好き嫌い」と経営』には14人の経営者に登場していただきましたが、僕がその会社の手伝いをしている関係にある経営者とか、以前からお仕事を一緒にしていたりとか、すでにお互いにわりとよく知っている方々がほとんど。それで、多少、本音の部分が聞けるということはあるかと思います。そうでないと、個人的な好き嫌いに踏み込んだ対話はやりにくいですからね。

高島:中身で衝撃を受けたのが、経営というのは、これまでさんざん、「いいか悪いか」について、理性に基づいて語られてきました。それがこの本では、「好きか嫌いか」という感情で語られている。感情で経営を語っていいんだ、という発見がありました。だから、しゃべっている経営者の人は、みんな生き生きとしている。

楠木:まさに、僕が言いたかったのはそこです。この本を出したかいがあります(笑)。そこで、今回は高島社長の好き嫌いをお聞きしたいと思います。事前に、ご著書である『ライフ・イズ・ベジタブル』とか過去の記事などを拝読しましたが、まず、気になったのは、小学校の卒業文集で、将来なりたいものとして、「大名」と答えていらっしゃる。子どもの頃から、かなりやる気満々ですね(笑)。

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