それでも、私が手掛けてきたニッケルビジネスは、キューバニッケル公団との間で20年間も続いている。諸般の事情で日本向けに出荷できない時は、外交関係のない韓国市場に輸出してきた。
今回のアメリカとの国交回復が決まればヘルムズ・バートン法も骨抜きとなるので、対日輸入を本格的に推進したいところだ。ただ、最近の原油価格の急落から、ベネズエラの経済も疲弊し始めて、エネルギー面でのキューバ支援にも陰りが出ており、今後の動向が注目される。
一方、キューバ政府は、経済的困窮解決の切り札を観光産業に求めており、ここ数年は毎年約20%ずつ、観光客が増加している。年間の観光客は約200万人。日本とキューバの外交関係は良好なのでキューバ旅行は人気があるが、日本の観光客はまだ年間7000人ほどだ。ほとんどが団体ツアーに参加するケースが多いようで、音楽好きや革命の闘士チェ・ゲバラの「ロマン」を求める観光客が多いようだ。
アメリカとの国交回復後は、当然「キューバ旅行ブーム」になると予見される。行くなら早めに行った方が良いだろう。まだまだ観光インフラが充分ではなく、首都ハバナですらホテルの数が少ないからだ。
日本人の若い世代のキューバファンの目的は音楽と野球である。キューバンダンスのサルサも隠れたブームで、若い女性がダンスを楽しむキューバツアーに参加する。一方、キューバ人も日本人が大好きだから陽気なキューバ人は大歓迎してくれる。治安面では大きな問題はないが、最近は客引きや「雲助タクシー」も増えてきているので、注意するに越したことはない。
実は、キューバは「国際貢献&教育大国」
さて、ここからが本番だ。実は、キューバが世界の医療大国であり教育・文化大国であることは、意外に知られていない。医療水準はやや大げさに言えば「世界一」といっても過言ではない。乳幼児の死亡率は世界最少。医療費の国民負担はゼロである。また、世界に送るボランティアの平和医師団の数は3万人とも5万人とも言われている。
無料ではないが、ベネズエラにもアルゼンチンにも多数の医師を送っており、派遣されるキューバの医師への対価は国際水準の半値以下であるが、ベネズエラなら石油、アルゼンチンなら穀物で国家間決済がなされる。
長年にわたって派遣されるキューバ人医師にとっては給与水準が低くても、多くの場合、キューバに戻るよりも経済的にはまだましなので、海外で働きながら、本国の家族に外貨送金しているようだ。発展途上国にとっても医師の育成には時間もカネもかかるので、キューバ人医師は歓迎なのだ。
一方、南米諸国や発展途上国の医師の教育をキューバ政府が無償で受け入れる制度も知る人ぞ知る制度だ。発展途上国からの医学留学生はキューバが好きで、祖国に帰ってからもキューバとの友好関係が維持されることが多い。
教育水準も高い。判断基準と詳細については複雑なので割愛するが、国連の統計によると、国連の統計が発表されて以来、キューバの識字率はずっと世界No.1(99.9%)だ。一方、国連の教育指数(Education Index)では2013年の発表ではフィンランドが1位で、キューバは5位だ。
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