さて、アメリカとの国交回復のあと、アメリカ資本が怒涛のように入ってきたら、どうなるだろうか。おそらくキューバ経済はアメリカ資本に飲み込まれるだろうが、中国やロシアがどう出るかも、分析しなければならない。
まず、中国は今回のオバマ大統領の発表には失望したに違いない。これまでも中国がキューバに投資してきたことがある意味で無駄になるかもしれないからだ。また、ロシアもプーチン大統領がトップ会談を成功させた直後だっただけに、今回の発表はショックだったはずだ。ロシアもキューバを南米への橋頭保としてきたが、今後のアメリカの動き方次第で重心は変化するかもしれない。
一方、ベネズエラはマドゥロ大統領がキューバ支援を継続するはずだが、今はベネズエラ経済が不安定になり、支えきれない可能性も高い。
われわれが、近未来のキューバとしてイメージしたのは、まずはベトナムだ。今から約25年前、旧ソ連が事実上崩壊し、一気にベトナムの体制は変わった。最近では、わずか3年前のミャンマーも英米の経済封鎖から解放されて民主化が進み、経済開放政策が進んだ。不確定要素が残るキューバ体制ではあるが、「3人の意見」は、今後キューバには、ベトナムやミャンマーよりも激しい変化が押し寄せるだろうというものであった。
だが、アメリカとの国交正常化はトップ同士の決断が早くても、実際には経済制裁の解除のプロセスにはやや時間がかかるだろう。具体的に言えば、共和党との折衝を重ねることで、最低でも2年間はかかると思う。
その間、キューバ国民が我慢できるかどうかが問題だ。まずはハバナにアメリカ大使館が設立され、民間交流も増えてくるだろうから、アメリカ人観光客のキューバ旅行ブームが本格化するだろう。
携帯電話やインターネット網が完備されるのには時間はかからないので、あっという間に情報革命が進むはずだ。海外からの送金が自由化されることで、海外に離散した「キューバのディアスポラ」が帰国して、経済の立て直しを担うだろう。50年前にフロリダに脱出してアメリカで成功した200万人ともいわれる豊かなキューバ人が祖国の再構築に励むことは良いことだ。
キューバのニッケルコバルトの埋蔵量は世界の2位である。だが、これまで資源開発が進んでいないために、ニッケル鉱石生産は6位以下で、同ニッケルコバルト地金の生産は世界では10位以下である。
今後、アメリカとの国交回復が始まればやはり資源開発が本格的に進むことが予想される。これまではカナダのシェリット社が優先してキューバニッケルとの折半でモアベイ鉱山を管理してきたが、今後は米系資源メジャーや中国がニッケルコバルトの資源開発に本格的に乗り出すだろう。
確かに今は資源開発は低調である。だが資源開発には最低でも5年から10年はかかるから、今から始めれば次の資源ブームに間に合うのである。一方、ベネズエラに依存してきた石油も、今後はアメリカのシェールガス・オイルが入ってくるだろう。石油の値下がりでアメリカは新しい市場が期待できるだろうし、おまけにニッケルコバルト資源の権益まで狙ってくることは間違いない。アメリカのシェール革命がキューバを呑み込んでくるが、キューバは強かにアメリカ経済を利用するだろう。
これからキューバが激しい変化の波に耐えられるか否かは独自の文化と社会を維持してきた優秀なキューバ国民の叡智にかかっているのかもしれない。短期的には混乱も予想されるが、キューバの近代化は進む方向であることは間違いないと思われる。私個人の意見としては、「最後の楽園、トロピカルキューバ」は今のままで残って欲しいと思っているのだが。
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