巨艦イオン、GMS苦戦を立て直せず 主力3子会社で社長交代の荒療治

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GMSに加え、業績悪化の要因となったのが、スーパー・ディスカウント・小型店事業だ。3~11月期で1億円の赤字に転落(前期は74億円の黒字)。「マックスバリュ」を展開するスーパー事業は、東北、中部、九州などで苦戦。コンビニ事業「ミニストップ」は、営業利益が前期比37%減の26億円に落ち込んだ。

それでもイオンは、2015年2月期の通期業績予想を期初から据え置いたままだ。営業利益は前期比17%増~22%増の2000億~2100億円を見込む。だが、11月までの進捗率は、わずか20%台であり、達成はほぼ不可能。これに対し若生専務執行役は、「チャレンジングな数字だが、打てるべく施策を打っていく」と述べるにとどまった。

イオンが復活するかどうか、真価が問われるのは来期以降だ。岡田元也社長は足元の苦戦を踏まえて、ヒト・モノ・カネすべてで戦略を再構築中で、いずれも来期以降の成否にかかわってくる。

持ち株会社の人員は半減

カネの面では投資計画を大きく変える方針である。不振が続くGMSやスーパーは、新規出店を大きく抑制する一方、既存店の改装を活発化していく。一方で、ディスカウントや小型店は成長分野と位置づけ、新店投資を積み増す。ASEANや中国が好調な海外事業では、従来計画より大幅に投資を増やすなど、全体でメリハリをつける方針だ。

合わせてモノの面では、これまでの買収などで複雑化しているGMSやスーパー業態について、イオンスタイルストアやフードスタイルストアなど5つの業態に再編成して、新たに店舗作りする狙いだ。

ヒトの面では、2016年2月期から持ち株会社の人員を半減させる一方、各事業会社に振り分けて、同時に権限委譲を進めていく。2008年に持ち株会社制に移行し、仕入れなどを本社に集約化して効率化を進めたが、その結果、組織が肥大化していたという。これに伴い、主要事業会社であるイオンリテール、イオンモール、ダイエーの経営体制を2月に刷新、社長をすべて交代させ、GMSやスーパー事業を早期に立て直したい方針だ。

はたして挽回できるか。セブン&アイ・ホールディングスが微増ながらも最高益を続ける中、反転攻勢できない巨艦イオンの手探りは続く。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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