公用語化でどうなった?楽天社員の英語力 世界で戦うニッポン企業の英語教育

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楽天の三木谷浩史会長兼社長。思い切った英語公用語化から2年半が経った(撮影:大澤 誠)

世界で戦うビジネスパーソンに英語は欠かせない。ではグローバルに展開している、もしくは今後目指していく日本企業は自社の社員に対し、どのような英語学習の機会を与えているのだろうか。

代表的な企業の事例を紹介しよう。ネット通販の楽天、日本最大の製薬メーカーである武田薬品工業、大手総合商社の一角を成す双日だ。この3社は単純なTOEICによる英語能力の測定のみならず、自社が独自に必要と判断する英語学習制度を設けている。

まずは、なんと言っても2012年7月、本格的に英語を社内公用語化して当時の大きな話題となった楽天だ。社を挙げた取り組みの成果は数字にはっきり表れている。単体3762名の社員(14年12月時点)のTOEIC平均点数は794点となり、英語公用語化計画をスタートした10年2月の平均点526点から大幅に向上したのだ。

楽天は、英語を基準とした人事評価も厳格に運用している。社員が部課長級などすべての役職へ昇格するにはTOEIC800点以上が必要で、2015年4月以降の新卒社員については入社時点で800点以上を取ることが求められている。

楽天は厳格に英語を人事評価へ適用

最近力を入れているのは、英ピアソン社が運営するスピーキング能力テスト「Versant(ヴァーサント)」だ。今は人事評価の基準になっていないが、全員が80点満点中50点以上取得することを目指す。同じTOEICでスピーキングとライティングの英語力を測定するTOEIC S&Wテストも試験的に実施しているが、より簡便で低コストの英語指標という観点から、Versantの受験を全面的に奨励している。

会社支給による支援制度も手厚い。TOEICについては1講座3カ月をスパンとした週1回、2時間の夜間レッスンが社内で全10~12回行われるほか、短期集中型で週2回、8~9時の1時間から同じく社内で行われる朝のレッスンもある。福利厚生として、各種学校やオンライン英会話サービスの割引プランも提供されている。

スピーキングについては基本的にTOEIC800点をクリアした社員に向けての研修だが、1カ月に1度、Versantのスコアアップを目指したセミナーを週末に実施し、現在は毎回30名程度が参加しているという。地方勤務者を対象とした、オンライン講座もある。

ただ、海外事業を含めた「その他インターネットサービス」部門は足元で営業赤字。鍛えた英語力を、どこまで海外ビジネスの成長に生かせるのか。本当の勝負はこれから始まる。

国内製薬最大手・武田薬品工業は、2013年4月の新卒採用から一部部門でTOEIC730点以上の取得を採用の目安に設定した。一方、ほぼ同時の2013年1月から、「T-Scale(Tスケール)」という制度を導入している。Tスケールでは、受験者が測定者と対面で20~30分の英会話を行い、一般的に日本人が苦手とされる自然な会話力が身についているかを重視する。「ビジネス英語の目標設定に役立ち、それに到達するために何を克服すべきかを知るツールになっている」(人事部の佐久間文恵シニアマネージャー)。

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