辞書をボロボロになるまで引いてはいけない理由
千田:そんな環境が、私の入ったESSにはあったのです。そのときのESSの顧問だった西村嘉太郎先生は、当時としてはまだ珍しかったラボで指導してくれました。LL(language laboratory)とも呼ばれるもので、音声を中心に英語を学んだのです。VOA(Voice of America)のSpecial English (アメリカの国営放送が作るニュース。平易でゆっくりしたスピードが特徴)を聞いてディクテーションしたり、リピートしたりということを繰り返しました。
安河内:福島大学はかなり進んでいたんですね!
千田:そう、少なくとも英語教育は最先端を行っていたと思います。先輩から、英語劇を最初にやった大学も、福島大だと聞いたことがあります。
ラボ、ディクテーション、速読、クリエーティブライティング、ノートテイキング(メモ取り)、パブリックスピーチなど、今では当たり前になりつつある効果的な学習法を、西村先生のおかげで実践できたのです。中でも自分の英語力の構築にいちばん効いたなと思うのは、「速読」でした。これで訳読から脱皮できたからです。
西村先生が、辞書を引いている学生をしかる姿もよく覚えています。「わからない単語は、いちいち辞書を引くな。わからない単語は、読み飛ばして前に進め!」
安河内:辞書を引くな?
千田:そう。辞書など引かずに早く読めと言うのです。「ゆっくり読んだってわからないものを、何で早く読んでわかるようになるのですか?」って聞くと「つべこべ言わずに早く読め。そのほうがわかるんだから!」と、ストップウォッチで時間を測りながら、無理矢理に速読させられました。陸上部の練習みたいなものです。「英語はスポーツだ!」という感覚は、このあたりから感じ始めていました。
最初は半信半疑でしたが、やってみると大切ではない単語が消え、大切なキーワードが飛び込んできて、より早く正確に意味をとらえることができるという不思議な世界を体験できるようになりました。今考えると、不思議でも何でもないんですけどね。
半年で英検1級合格に導いた究極の訓練とは!?
安河内:へぇー。先生の「速読」指導、先輩との「音読」がポイントだったのですね?
千田:そうです。ただし、僕はESSに最後に入ったから、みんなに早く追いつきたいという気持ちがあったので、最初の半年間は自主勉強をしました。夕方6時から翌朝4時ぐらいまでの10時間を使ってね。
安河内:訓練ですね! どんなことをしたのですか?
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