NTTドコモの誤算、インド投資撤退に難航 投資先の通信会社は960億円の債務超過

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「TATA DOCOMO(タタドコモ)」のブランド名で第2世代の通信規格によるサービスを開始したのは2009年6月。翌年には第3世代のサービスもスタートした。契約者数は出資前の2930万件(2008年3月)から14年3月には9800万件(ともに関連会社を含む数値)と3倍以上に膨らんでいる。しかし、ネットワーク充実化にかかる多額の設備投資などが影響し、収益に結びつかなかった。

NTTドコモが有価証券報告書で公表しているタタ社の業績はさんざんだ。2012年度の営業収益は2100億円で723億円の最終赤字。2013年度も営業収益は8%ほど増えたが、最終赤字は850億円とさらに膨らんでいる。この大赤字が響き、2014年3月時点では960億円の債務超過。これだけ財務が悪化すると、タタ・サンズにとっても買い手の仲介そのものが難しくなっていると考えられる。

役員や社員の派遣で支援したが・・・

NTTドコモの加藤社長。2014年度は大減益に陥る見通しで、緊急のコスト削減策を打ち出した(撮影:梅谷秀司)

これまでもドコモは日本から役員や社員をインドに派遣して事業を支援してきた。現地で「タタドコモ」のブランドを定着させ、3Gサービスを民間で最初に開始するなど、一定の成果はあったとしている。

にもかかわらず撤退を決めたのは、「通信行政の混乱や価格競争、3G回線普及の遅れなどから、ドコモのノウハウを十分に展開できず、当初期待した成長やシナジー獲得には至っていない。EBITDA(償却前営業利益)は改善傾向で事業状況は良くなっているが、リスクなども鑑みてオプション行使が最良と判断した」(ドコモ国際事業部)と説明する。

ドコモは国内で音声定額を含む新料金プラン導入による影響などから、2015年3月期の営業利益は6300億円(前期8191億円)と大幅減益となる見通し。NTT東日本・西日本などと共同し、グループ総出のコスト削減策の準備を進めている。2月からは光回線と携帯電話のセット割引「ドコモ光」も開始する。本格的な国内での事業テコ入れを前に生じた今回の一件は、まさに誤算というほかない。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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