NTTドコモの誤算、インド投資撤退に難航 投資先の通信会社は960億円の債務超過

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出資を発表した2008年の記者会見。写真はタタ・テレサービシズのアニール・サルダナ社長とNTTドコモの山田隆持社長(当時)(撮影:尾形文繁)

インドの投資案件から撤退を決めていたNTTドコモが、退くに退けない状況に陥っている。懸案は2009年に行った投資だ。ドコモは現地の通信事業者であるタタ・サービシズリミテッド(以下、タタ社)に合計2670億円を出資し、株式の26.5%を保有している。だが、厳しい競争環境に加えて、獲得した電波が割り当てられないという誤算続き。業績は赤字で、投資から5年で減損など2220億円もの関連損失を計上している。

2014年4月の決算会見で加藤薫社長は「中長期の成長性は変わらないと思うが、われわれが当初予想したものではなかった」として、投資の引き上げを発表した。同年7月には、撤退に向けてタタグループの持ち株会社タタ・サンズと取り決めたオプションを行使することを先方に伝えている。

国際仲裁裁判所に駆け込む

このオプションとは、2014年3月期にタタ社が所定の業績を達成できなかった場合、取得価格の5割もしくは公正価格のいずれかで、ドコモの保有株を売却できる「買い手」の仲介を要求できるというもの。ところが、詳細は不明だが、タタ・サンズはドコモのオプション行使に対応した手続きを進めないのだという。当事者間の協議には限界があるため、今年1月3日にタタ・サンズを相手取り、ロンドン国際仲裁裁判所に仲裁の申立てを行った。

仲裁裁判所の判断が下されるまでには1年半から2年程度かかる見通し。ドコモは2000億円以上の損失を強いられたうえ、保有株も売るに売れないだけに、”泣きっ面に蜂”ともいうべき状態だ。売却が遅れることでさらなる損失計上を迫られる可能性もある。

出資当時のリリースでは、「急速な経済成長が見込まれるインド移動通信市場での事業領域拡大と収益増大を目指し、持続的成長を推進します」としていたが、現実は厳しかった。インドはユーザーが安さを求め、頻繁に通信サービスを乗り換える厳しい市場だ。バーティ・エアテルを筆頭に10数社のプレーヤーが乱立し、タタ社の契約数シェアは約6.9%の第7位にとどまる(2014年12月時点。インド電気通信規制庁)。

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