孫社長、意中の後継者はいったい誰なのか? ソフトバンク前社長室長が明かす、その条件

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同時に「後継者育成」のための「ソフトバンクアカデミア」を創設すると発表した。私はこのとき、孫社長に「後継者育成はまだ早いのではないですか。松下幸之助塾長が松下政経塾を創設したのは85歳のときです」と話した。

85歳と聞いて、53歳の孫社長はちょっと驚いたようだったが、はっきりとこう言われた。

「後継者を育てるのに、10年はかかります」

受講者はソフトバンクグループ内だけでなく、外部からも募られた。「求む、後継者」の呼びかけに、グループ内から200人、外部から100人の計300人が1期生として選抜された。

時価総額、10年で5倍が後継者の条件

2010年9月28日、孫社長はアカデミア生に対し、第2回戦略特別講義「意思決定の極意」を行い、後継者の条件を明確に述べた。

「後継者のノルマは大きいよ。時価総額を10年で5倍に成長させることです」

当時、時価総額は約3兆円だったので、5倍は約15兆円。ちなみに、日本の時価総額ランキング1位はトヨタ自動車の11.1兆円。以下、2位が三菱UFJの約6.1兆円、3位がNTTドコモの約6兆円であった。時価総額5倍のノルマとは、トヨタを抜き、日本一になるということだった。

「在任の平均期間が10年だとすると、その間に5倍にすること。年平均17%の成長を続ければ、10年で5倍以上になります。ざっくり言えば、1年に20%の拡大です」

ただし、増収増益をし、ベストを尽くして成長させるだけでは、孫社長の後継者とはなりえない。たとえば、年率7%の成長をしていたら、10年で倍になる。普通ならそれでよしとするだろう。だが、孫社長の目標である17%と比較すれば、10%も足りない。

自分の背丈よりも高い目標を公言する。それを人々は「大風呂敷」な目標と言う。人から見て「大風呂敷」でも、自分の自信の範囲であれば有言実行を目指す。そこまで自分を追い込まないと、普通の人生で終わってしまう。経営者だったら普通の会社で終わる。それが孫正義という経営者の考え方だ。

「たとえば、年率3%成長の普通の会社で終わる。3%成長の会社でいいと思うような人は、少なくとも僕の後継者になってもらっては困る。後継者は普通の会社を目指してはいけないということであります」

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