寿命については、今後、飛躍的に延びることが予測されます。統計的に言えば、毎日5時間寿命を延ばしているのです。ですから数十年のうちには寿命を大幅に延ばし、30年後には、平均的な人であれば100歳まで生きるようになっているのではないでしょうか。
それには医療の目覚ましい発展や老化の克服が関わっています。再生医療の進展により、2045年までには主な臓器を実験室で作れるようになっているでしょう。すると内臓を取り替えることができますから、「内臓疾患」という単語が辞書から消えることになります。
また、今では特定の遺伝子が老化現象に作用していることがわかってきています。すでに老化のプロセスを左右する遺伝子が60以上も特定されました。そうすると将来は、それらの遺伝子を遺伝子治療で修復できるかもしれませんし、遺伝子操作により抗酸化物質を作り出して酸化を止めて、寿命を延ばせるかもしれません。
その一方で、大事なのは、長い期間生きられるだけでなく、「永遠の若さ」を保つことです。そこで求められるのが「若返り」です。だからこそ今、若返りのプロセスを左右する遺伝子を特定しようとしています。人間は遺伝子的には98.5%までチンパンジーと同じです。それなのに人間のほうが寿命は倍近く長い。ということは残りの一握りの遺伝子の中に、私たちの寿命を倍にする何かが含まれているのかもしれない――こうした観点から遺伝子の研究が進んでいます。
いずれは寿命を左右する遺伝子を発見できるだけではなく、若々しさを左右する遺伝子も見つけられるはずです。つまり、若返りを可能にする遺伝子です。そうすれば、老いさらばえてぼろぼろの体で生き続けなくていいのです。
未来の仕事はどうなる?残るのは頭脳を使う仕事
「シンギュラリティ」に突入するとすぐさま消えてしまうであろう仕事は、退屈な仕事です。ロボットは計算がものすごく速く、反復的な仕事は人間より得意ですからね。同時に、一部の中流階級の仕事もなくなるでしょう。会計や代理店、仲介業などです。たとえばストックブローカー(株式仲買人)はもう株を売ることはできなくなります。ほとんど無料で、インターネットで株の売り買いができるからです。では、彼らは何を売ればいいのでしょうか? それは、「知的資産」です。つまり“助言”、“経験”、“ノウハウ”、“機転”です。コンピュータやロボットにはそういうことはわからないからです。ですから、これからの中流階級の仕事はどんどん知的になり、人間の脳を使う仕事になっていきます。
イギリスは今、炭鉱産業よりも多くの収益をロック音楽で上げています。一次産品の値段は時間の経過とともに下がっていきますが、歌や本、科学、教育などの知的財産は、どんどん値段が上がっていきます。人間の頭脳や想像力は大量生産できないからです。未来に求められるのはクリエイティブな仕事、革新的な仕事、科学的な仕事、芸術的な仕事です。
そして、最後に覚えておくべき大事なもの。それは、「教育の力」です。働く人々を教育して、未来の労働に加われるようにすることが重要です。世界は単純にはなっていかず、どんどん技術的になっていきますから、科学・技術の教育が必要ですし、数学・工学も重視しなければなりません。これらが未来の社会を作るツールになるからです。
政治家や政策決定者たちは教育、とりわけ科学教育にもっとお金をかけなければいけないということに気付き、またイノベーションの文化を奨励するべきです。ただ消費するだけの文化は望ましくありません。起業家の文化が必要です。そして政治家たちは、若者に「自分たちが世界を変えられるんだ」という感覚を教え込まなければならないのです――。
※ 続きは1月2日(金)に掲載します。
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