「安倍首相は当面、強硬的なことをしない」 ケント・カルダー氏が首相の長期戦略を予測

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――民主党は今後どうなって行くと思いますか。

民主党が再編を進める次のチャンスは来春の統一地方選挙です。民主党内では不安が非常に高まっており、野党再編により分裂する可能性もあります。

――次世代の党が事実上姿を消したことの意味は何でしょうか。

自民党に対する右派からの圧力が弱まるでしょう。大阪以外での維新の会の勢いが無くなったことも同様です。

――反対に日本共産党は躍進しました。

投票率が低いため、共産党や公明党のような組織力の高い政党にとっては追い風となりました。共産党は、特に沖縄のような場所で危険な保守派の自民党的と考えられる政策に対し、真剣に、効果的に挑む唯一の野党であるという認識もプラスになりました。

――記録的な投票率の低さには、どのような意味があるのでしょうか。

日本の有権者の大半はこの選挙と日本の政策動向にうんざりしています。しかし、2016年7月に参院選を控えているため、この状況は続かないでしょう。時期が決まっているので不意打ちの選挙ではありません。また、夏の選挙になるため、投票者はあまり忙しい時期ではなく、もっとじっくり考えることができるでしょう。

安倍首相は当面、強硬的なことはしない

――この選挙結果は政策に影響を及ぼすでしょうか。安倍首相は改革を推し進めやすくなったのでしょうか。

安倍氏にとっては改革が進めやすくなるでしょう。しかし、2016年の参院選でかつことにより憲法改正の可能性を高めることを目指しており、強硬的な形での政策推進はしないでしょう。

――集団的自衛権についてはいかがでしょうか。今後の法整備に向けて安倍氏の力は強くなったのでしょうか。

安倍氏の力はわずかに強まりましたが、共産党が国会での力を倍増させましたから、さらなる舌戦となるでしょう。

――安倍氏は原発再稼働などのエネルギー政策を推進するでしょうか。

安倍氏は核エネルギーを推進するでしょう。しかし、九州の川内のような簡単に承認が得られる地域に限ってのことで、全国的にではありません。

――政府は沖縄へのアプローチを変えると思いますか。

日米同盟の抑止力が弱まることを恐れているため、安倍氏はアプローチを変えることはないでしょう。しかし、重大な政治的岐路に立たされるような論争を避けるため、辺野古の計画は鈍化するでしょう。少なくとも2015年春の終わりごろ(統一地方選挙の後まで)、あるいは2016年後半(参院選後)まで先延ばしにされる可能性があります。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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