「マッサン」の孫、NHK朝ドラの英断を語る

ウイスキーの生みの親から感じたダンディズム

竹鶴孝太郎(たけつる こうたろう)●1953年北海道余市にニッカウヰスキー創業の竹鶴政孝・リタ夫妻の初孫として生まれる。父は養子で政孝のおい。少年期まで夫妻と同じ屋根の下で過ごす。青山学院大学経営学部を卒業後、ニッカウヰスキーに入社し、約20年間勤務した後、退社。個人で会社を創設し、2005年にアマナに合流。(撮影:大澤 誠)
朝のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「マッサン」で話題の、日本ウイスキーの「生みの親」夫妻を孫の目線から描く『ウィスキーとダンディズム』を著した。

──冒頭の祖父・政孝氏の葬儀でのシーンが印象的です。

85歳で亡くなり、天寿を全うしたといっていい。最後のお別れの儀式の際に、父・威が刷毛に含ませたウイスキーで唇を湿らせた。しかし、1日1本以上飲む人だから、唇を湿らせるだけのタイプではない。口に含ませるだけでは満足しないだろうと思い、体全体にニッカG&Gを1本丸ごと振りかけた。青山葬儀所に芳醇なウイスキーの香りが立ち込め、祖父も心なしか満足げに見えたものだ。

祖父は1894年生まれ、たまたま今年は生誕120年。創業したニッカウヰスキーも80周年という節目の年に当たる。スコットランド出身の祖母リタは私が8歳のときに亡くなっているから、直接の記憶で多くを語ることはできないが、祖父(の死)は26歳(のとき)だったので、より記憶は深い。ただ、あらためて父の書いた本を読むと、葬儀の際のウイスキーはスーパーニッカになっている。記憶違いがあるかもしれない。

初めて祖父の本を読んだ

──朝ドラを契機に記憶がよみがえったのですね。

父は90歳と高齢で、母・歌子は3年前に亡くなった。母の妹の増子が小樽に健在で、祖父が一人で余市に滞在するときに面倒を見てくれた。てきぱきした女性で祖父とは波長が合ったようだ。私自身、テレビドラマになるというので、高度成長期のウイスキーブームのときに刊行された祖父の本を初めて読んだ。実は今まで自分の家についての本を読んだことがなかった。

──歴史を再認識された。

時代背景もあって、確かに面白い事実の連続だ。テレビ番組として取り上げたいという話は以前もよくあった。NHKでも一つの題材として浮上しては消えていたようだ。登場人物はスコットランドに加え大阪、横浜に北海道、さらに鎌倉、逗子と転々とする。これではコストがかかる。公共放送として企業もののバランスを取るのが難しい。しかもヒロインは外国人。そのあたりも、けっこうリスクがあると読んだらしい。

──今回は採用されました。

NHKの朝ドラは二十数%の高視聴率を続けてはいるが、革新しないとそれを維持できないと考えていたようだ。新たなものに挑戦せずにはさしもの朝ドラも寿命が短くなってしまうと。それで、今回は白羽の矢が立った。

──外国人ヒロインのインパクトも大きいようです。

実際の祖母リタはもっとマイペースだったらしい。そうでなければ、やっていけなかったのだろう。

──戦中も帰国しませんでした。

外国人は出身国に引き揚げるのが当たり前だったが、このまま残ると。自宅にいただけでほとんど外には出られない。手紙は出せないし、逆にもらえもしない。隔離状態で、本を読むとか音楽を聞く、服を自分で仕立てるぐらいしかできなかった。ラジオを聞いていてもスパイ行為をしているのではないかといわれたらしい。祖父はどこかで何とか英語の本を見つけ一言メッセージを入れ、彼女に渡していたようだ。

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