ホンダの「遠隔操作・分身ロボット」は何が凄いか ASIMOから生まれたHondaアバターロボットのワザ

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Hondaアバターロボットと生みの親である吉池孝英氏(筆者撮影)

ロボットはどこまで人に近づけるのか……。ホンダは二足歩行の人型ロボット「ASIMO」に代表されるロボティクス技術の開発を長年行ってきた。その最新の技術が搭載された「Hondaアバターロボット」が、「2022国際ロボット展」(2022年3月9日(水)~12日(土)/東京ビッグサイト)に出展されている。

Hondaアバターロボットは、2000年に誕生した初代ASIMOから培ってきたロボティクス技術から生まれた。ASIMOは誕生後も継続的に進化を続け、2011年の新型ASIMOでは9㎞/hでの小走り(従来型は6㎞/h)や、片足での連続ジャンプ(ケンケン)などを披露した。そして2013年には、危険を察知してリスクを回避する新機能が織り込まれた。

ASIMOが考えて行動する

新型ASIMOが見せた小走りや連続ジャンプ、そしてリスク回避など従来型と次元の異なる新たな挙動や機能は、世界初の「自律行動制御」によって実現した。自律行動制御とは、ASIMO(自ら)が考え行動プランを立て、その通りに制御(律)する技術であり、世界中のロボティクス研究者たちを驚かせた。

筆者は新型ASIMOを当時の発表の場(2011年)で取材したが、向かってくるボールを受け止め蹴り返すしなやかな身体の動き、ボトルのキャップを開けて柔らかい紙コップに注ぐ滑らかな手先の動きなど、新世代のASIMOを実感した。

こうして優れた制御を行うまでに成長したASIMOだが、2000年当時、「自動車メーカーがロボットを作る意義は?」「ロボットがなぜ乗り物なのか?」といった逆風も吹いた。

ASIMOのネーミングは“Advanced Step in Innovative Mobility”に由来する。つまり、ホンダはASIMOを「新しいモビリティ」として位置付け開発してきたのだ。ちなみにホンダは、ASIMOの「歩行」に親愛の情を込めて「走行」と呼ぶ。そのASIMOは誕生して22年になる。

ホンダはこれをひとつの節目として、本社1Fに設けられたウエルカムプラザ(東京都港区)で長年行われてきた「ASIMOステージショー」を3月31日で終了する。同じ日に、科学コミュニケーターとして日本科学未来館(東京都江東区)で活躍してきたASIMOも役割を終える。われわれの前からASIMOはいなくなるのだ。

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