宮沢賢治もディベートをしていた!? 日本の教育を変えるキーマン 松本 茂(2)

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松本:だから、議論の組み立て方がインプットできない。仮にあったとしても、賛成、反対のどちらの立場も取れそうなトピックであることが非常にまれですね。

さらに、中学、高校の授業というのは、生徒に意見を求めるのではなく「わかりましたか?」と確認する内容のものが中心です。「でも、何か変だよね?」といった問いかけがされることはほぼない。読んでみて単語がわかって、文法を理解して、内容がなんとなくわかって終了、となる。実は検定教科書の多くの英文って、論理展開という点では突っ込みどころが満載なんですよ。

安河内:たとえば、どういうことですか?

松本:ひとつの英文の中に主な考え(議論)がいくつ示されているのか、そしてそれぞれの議論が書き手の経験またはデータ資料といったことに裏付けされているかどうか、といったことを分析する読み方はほとんどされていないんですね。文脈はいっさい関係なくて、どの一文も等しく重要だという前提で読んでいる感じがします。実際には英文には重要な箇所とそうでない箇所が混在するわけです。まずは議論の構造を理解しつつ読むことが絶対的に必要だと思います。

安河内:スピーキングテストに対する大いなる誤解のひとつに「スピーキングテストなんてただの会話テストだから、読解力は育たない」というものがあります。そういった声にはどうお答えになりますか?

松本:今、申し上げた議論構造が明確な英文を多読し、構造を理解したうえで、異なるトピックに関して議論を組み立てアウトプットするという一連の流れを練習すれば、読むことと話すことは十分に関連づけられます。

安河内:そうですよね! 論理的に話すためには、その前に論理的に読む作業があるんですよね。

松本:ええ。あるいは論理的な話を聞くとかね。

安河内:ええ。そして、論理的に話せれば、ある程度は書けますよね。つまり私は、スピーキングテストというのは、それ自体が4技能テストだと思うのです。それなのに、ただの会話テストだと勘違いしている人が多いので、事あるごとに反論したくなってしまいます。

コミュニケーションとは何ぞや?

安河内:少し話がそれますが、コミュニケーションという言葉に対しても、多くの人が誤解をしていると思います。「コミュニケーションなんて単なるおしゃべりだ」といった意見ですね。「そんな表層的な英会話を教えても意味がない」という声が少なくないです。コミュニケーションという言葉の定義について、日本人が表面的な英会話だと勘違いしているという現象について、コミュニケーション教育学がご専門の松本先生はどう思われますか?

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