宮沢賢治もディベートをしていた!? 日本の教育を変えるキーマン 松本 茂(2)

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松本:違いますね。

安河内:それよりも、大切なのは論理的であること?

松本:相手をリスペクトして議論を楽しむ気持ちを持つことがまず大切ですね。そうでないと、いくら試合のときでも相手に嫌われます。

安河内:だから、私みたいにペラペラしゃべる相手の話もちゃんと受け止めてくれる松本先生のようなタイプの人が、実はディベートに向いているんでしょうね。

松本:安河内先生がペラペラしゃべる方とは思いませんが……。いずれにしても、相手の言い分にしっかり耳を傾ける姿勢は必要だと思います。あとはディベートもコミュニケーションのひとつの形態ですから、試合でない場面での議論であれば、「こうあるべき!」という形があるわけではないのです。時にはディベートすべきじゃない場面もありますよね。たとえば、いくら優秀なディベーターだった人も、奥さんとはディベートしても絶対勝てないとかね(笑)。

安河内:おお、元学生チャンピオンの松本先生でも奥さまとのディベートには勝てないのですね(笑)。

松本:論理では勝負できない状況や関係性ってありますよね。「あなたはあのときこう言った」とエビデンスを出されても、こちらには記憶すらないことって、よくありませんか?

安河内:ありますね。それでは勝てない、というか勝負にならないというのもよくわかります。

意外と長い、日本のディベートの歴史

安河内:帰国されてからの話を聞かせてください。日本の大学では最初からコミュニケーション学を教えられたのですか?

松本:私が帰国した1980年代初めには、日本の大学にはコミュニケーション学部はひとつもありませんでした。学科さえもなかったと記憶しています。最初は通訳養成学校でパブリックスピーキングの講師をさせてもらって、その後、大学の非常勤講師から専任講師となっていきました。でも、教えるのは初めのうちはコミュニケーション学の科目ではなく、もっぱら英語でした。

安河内:日本のディベート界では、松本先生は完全に草分け的な存在ですよね?

松本:どうですかね。アメリカで正式にディベートコーチとして給料もいただいていた日本人としては初めてだったかもしれません。

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