「紙の書籍がなくなるだって?冗談じゃない」 小さな総合出版社、三島邦弘氏の闘争心

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──同時に、原点回帰を掲げています。

一冊入魂という言葉を信条にしている。思いを込めて作り上げ、それを一人でも多くの人に届ける。原点とは、作るから届けるまでを分断しないでやっていくこと。そこの循環をより豊かなものにしていきたい。そこで紙にもこだわる。本の原料は紙。北海道の苫小牧で木材パルプの生産を見て、ここから本作りは始まると痛感した。

その後どうやって形にするのか、「寺子屋ミシマ社」で編集過程も公開している。その面白さは編集の人間が独占してきた。文章だけを目で追うのが読者なら、電子書籍でもいいではないかとなるが、文章は本の体系のほんの一部でしかない。こうして目次が作られ、見出しも直前まで違っていたと、そのイベントで見ていただく。そうすると、読書の楽しみが深まる。そういうことで、本好きが一人でも増えてくれればいいなと思っている。

昔のように書店に置けばどんどん本が売れることは、もう二度とない。しかし、紙の本作りの実際を、私たちは全力で伝えていかないといけない。

時代の流れにのみ込まれないために

──ネット雑誌の紙版も毎月作っています。

商業出版で消費物として本を作るのとはちょっと違う。サポーターを募り、毎号サポートナンバーを入れ、号ごとに本文用紙や厚さも異なる。世界に一冊の本ができている。そうすると、本の楽しみ方も変わる。

時代の大きな流れにのみ込まれないで生きていくことが、今問われている。ものをしっかり考えるうえで紙の本をなくしてはいけない。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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