『蜩ノ記』監督が継承、「黒澤監督の仕事術」 「すべてに手を抜かない」を受け継いできた

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©2014「蜩ノ記」製作委員会
第146回直木賞を受賞した葉村麟のベストセラー歴史小説を映画化した『蜩ノ記』が10月4日に全国公開される。
主人公・戸田秋谷(役所広司)はとある罪で切腹を命じられたが、決行の日は10年後の夏という異例のものだった。彼は切腹の時までに藩史の編纂を仕上げるように命じられていたのだ。檀野庄三郎(岡田准一)は、そんな彼の監視役として秋谷のもとに派遣される。当初、秋谷に不信感を抱いていた庄三郎は秋谷が切腹するきっかけとなった事件の真相を知るに至り、秋谷の気高い生き方に魅了されるようになる――。
 本作のメガホンをとったのは、巨匠・黒澤明監督に師事してきた小泉堯史監督。崇高で気高き人間たちが力強く生きるさまを、四季折々の美しい景色の中で描き出している。今回は、黒澤組ゆかりのスタッフとともに新たな作品を生み出した小泉監督に、師・黒澤明監督から学んだことについて聞いた。

照明を多く使う黒澤監督の撮影現場

――時代劇の制作本数が減り、時代劇を継承することが難しくなっています。監督は、黒澤明監督からいろいろなものを継承されたと思うのですが、時代劇をめぐる状況をどのように見ていますか?

最近は日常生活で着物を着る機会がなくなっている。そんな中、かつらや所作といった時代劇の技術は経験の積み重ねですから、それをいきなりやろうとしても難しい。経験を重ねなければならないのですが、そういう機会が少ないのは本当に残念です。映画の場合は、フィルムに映ったものに説得力を持たせないといけないのですが、それはやはり経験を重ねないとそうはいかない。

――小泉監督の撮影現場では、数台のカメラを用意して、様々なアングルから一気に芝居を撮影するという黒澤監督のスタイルを踏襲しているそうですが。

フィルム撮影の場合はライティングが大変なのです。ある程度の光量がないと映らないですから。2台、3台のカメラを使うとなると、ライティングは両方からきちんと当てなくてはならない。カメラが1台だけだったら、片側だけ当てればいいですが、2台、3台ともなると、反対側からもきちんと当てなくてはならなくなる。そもそも光源というのはだいたいどこかに一個で決まっているもの。ろうそくがあったら、そこから出た光を基調にしないと不自然になる。フィルムの場合、そこから作るのがなかなか難しいのです。それも技術の継承ということになると思いますが、それを照明さんがよく作ってくれたなと思います。

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