まず汗を出せ、汗のなかから知恵を出せ 机の上で考えていても、生きた知恵は出てこない

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昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部)

 

この話は、いつごろの話であったかは定かではない。しかし、季節が夏で、松下幸之助が、ベッドに座って、ゆっくりと団扇(うちわ)を使っていた光景だけは、鮮やかに思い出すことが出来る。

某経済誌のインタビュー記事を思い出した

休日であった。朝からの呼び出しで、午前中の仕事が終わり、昼食をした後だった。しばらく雑談。そのとき、私は、ふと、某経済誌に載っていた、ある経営者のインタヴュー記事を思い出した。その内容は、忘れたが、経営者の写真があった。その写真のなかで、経営者の後ろの壁に、大きな墨文字で書かれた、一枚の縦長の額も写っていた。

その額の言葉は、「知恵を出せ。それが出来ない者は汗をかけ。それが出来ぬ者は去れ」であった。その言葉を見たとき、なるほどと、いたく感心した。そうか、よく考えて知恵を出さなければならないんだ。それが出来なければ、行動し活動し、汗を流すことが大事なんだ、と思った。

プレハブ住宅の建設会社。かなりの成功をおさめていた。さすがと思いつつ、だから、このとき、この言葉は、この経営者の言葉と疑うことはなかった。しかし、この言葉が土光敏夫(1896-1988、東芝社長・経団連会長)の言葉であることを知ったのは、後日のこと。まさか、土光の言葉とは、知る由もなかった。

私は、松下と雑談をしながら「先日、あるプレハブ住宅の社長がご自分の考えをまとめて、それをモットーにしているようで」と既述の言葉を松下に話をした。松下も、同調するだろうと思ったところ、怪訝そうな顔をしてこう言った。

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