三越伊勢丹とH2Oを分析する 百貨店が受けた消費増税のダメージはどれほどか?

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続いて、ROA(Return On Assets)を計算してみましょう。この指標は、総資産を使ってどれだけの利益を上げているかを示したもので、「営業利益÷資産合計」で計算されます。ROAは、営業利益のほかに、純利益や経常利益の割合を計算する方法もありますが、ここでは本業の実力を知るために営業利益を使います。

それぞれ、今期の業績予想にある通年の営業利益を使って計算しますと、三越伊勢丹は2.8%、H2Oは3.4%。そして、先ほど例にとったファーストリテイリングは15.2%です。こちらも大きな差があることが分かりますね。

縮小する市場、必要とされるイノベーション

これだけ低収益ですと、百貨店という業種は、中長期的には現状のビジネス形態を維持するのが難しくなるのではないかと感じます。投資家の視点では、同じおカネを投資するのであれば、高いリターンが出る企業を求めますし、金融機関等のおカネを貸す側にとっても、この先もし、金利が高くなるのであれば、リターンの低い企業には貸しにくくなるからです。

今のところ、百貨店2社の安全性には全く問題はありませんが、このように低収益のまま、現在の事業規模を維持できるかというと、難しいのではないかと思うのです。その点でも、何か際立った特色を出すなどの、イノベーションは必要です。

百貨店の市場規模は、年々縮小傾向にあります。今では、コンビニやネット通販の売上高の方が上回っている状況です。百貨店は、立地という面では最高の場所を確保していますが、地の利を十分に生かし切れていないのです。

短期的な注意点は、消費増税の影響がいつまで続くのか、特に7〜9月の業績がどうなるのかという点です。長期的には、来年10月に行われる可能性の高い二度目の消費増税の影響と、縮小していく百貨店市場に対し、各企業が打ち出す戦略に注目です。

小宮 一慶 経営コンサルタント

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こみやかずよし / Kazuyoshi Komiya

小宮コンサルタンツ代表取締役CEO。大企業から中小企業まで、企業規模や業種を問わず、幅広く経営コンサルティング活動を行う一方、講演や新聞・雑誌の執筆、テレビ出演も行う。著書に『「なれる最高の自分」になる方法』『ビジネスマンのための「習慣力」養成講座』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』(日本経済新聞出版社)、『株式投資で勝つための指標が1冊でわかる本』(PHPビジネス新書)など。

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