「メルカリ」、米国進出で一気に勝負へ 激闘C2C市場最前線を追う<1>

✎ 1〜 ✎ 20 ✎ 21 ✎ 22 ✎ 最新
拡大
縮小

メルカリのようなフリマ事業はシェアエコノミーの世界観のひとつであるとし、AirbnbやUberより広義にとらえるとC2Cとなる。世界においてそれらのようなポジションを築き上げたいと考えているようだ。

米国展開がメルカリの本丸

2014年8月時点でメルカリは収益化していない、売り上げゼロのサービスである。本特集第2弾で紹介予定のフリルは手数料制を採用しており、出品者は成約金額の10%をフリルに支払う。収益化に関してはフリルのような手数料モデルと広告モデルの2パターンが考えられると山田氏は述べる。

「将来的には手数料の導入も検討しています。他社の10%は適正かと思いますが、米国では5%とか配送料込みで20%という事例もあります。注目しているのは広告モデルで、普通に出品していたのでは成約しにくいので、出品者が課金して出品を上位表示させるという仕組みです。中国の淘宝(タオバオ)も米国のEtsyも手数料ではなくこの広告モデルを採用しています。全体の流通額に対して3~5%程度の売り上げが上がっているとも聞いており、手数料モデルではなく広告モデルのみという収益化もありうると考えています」

収益化の方法はほかにはヤフオクが採用している月額課金(Yahoo!プレミアム:ヤフオクのみではなくYahoo!一連のサービス特典を受けられる)もあるが、海外ではDropboxのようなインフラやHuluのようなエンタメしか月額課金が機能していないことを引き合いに出し、メルカリとの相性はあまりよくないのではないかという見解を山田氏は示した。

最後に海外展開について。国内ではダウンロード数ベースでは屈指といえるメルカリだが、本丸は米国展開だという。

整然と机が並ぶオフィス内の様子

「私自身、月の半分から3分の2を米国で過ごし、米国での立ち上げに時間を割いてきました。2014年内にサービスをリリースしたいと考えていますが、日本のメルカリをそのまま踏襲するわけではなく、米国にローカライズしたUXを磨き込んでいます。テキストが少なく、シンプルで誰が見てもわかるようなモノです。それなりの手応えもあります」

米国での立ち上がり次第では、一気に勝負を懸けるために次の大型資金調達も視野にあるという。米国で成功し始めれば、競合が日本以上の資金力で立ち上がってくる可能性がある。そうなる前に先手を打ちたいという山田氏の読みは、幾多もの修羅場をくぐったであろうシリアルアントレプレナー(連続起業家)の感覚といえるかもしれない。

米国で成功すれば米国での上場も見据えたいという。「最悪、国内で負けても米国で勝てればいい」と山田氏は米国展開に懸けている。幾多もの日本のスタートアップが米国進出にほとんど失敗してきている中で、メルカリはどのような運命になるのか。山田氏の手腕に期待したい。

【梅木雄平のスタートアップチェック (各項目を1~5で採点)】
●経営陣:4.8 ソーシャルゲーム会社のウノウをZyngaに売却した経験を持つシリアルアントレプレナーである山田進太郎氏の戦い方は、ドラゴンボールでいうスーパーサイヤ人を思い起こさせる、通常のスタートアップ経営者とは異次元のレベル。グローバル展開を本当に成功させるのではないかという雰囲気が漂う。
●市場性:4.5 C2Cリセール市場はマクロ環境的に成長市場。比較的大きな市場であり、この中の数%から10数%を取れれば十分市場がある。 
●利益率:3.8 流通額に対する5~20%という手数料モデルか、サイト内掲載上位表示による広告モデルが想定される。いずれにしろ流通額が伸び、場の力が強まることが条件であり、流通額と利益額がそのまま比例する。月額課金モデルのように、後から利益率が上がっていくモデルではない。 
●競合優位性:4.2 2012年がスマホ関連C2Cサービスの勃興期であったように、参入障壁は低い分野。ただ、経営力やプロダクト開発力で競争優位性があり、米国展開時も競合が出てきたとしても簡単には負けるようには思えない。
●海外展開力:3.5 2014年内に米国でサービス開始予定とのことで、いったんレーティングは控える。 
●総合点 :4.5  サービスリリース1年あまりで400万ダウンロード、月次流通額10億の立ち上がりはC2C最後発でありながら凄い。海外展開の成否次第では大化けして、日本発世界で戦えるスタートアップになる可能性があり、期待値は高い。
●予想EXIT:2016年中の上場
●推定時価総額:500億円
 推定根拠:2014年8月時点での公表月間流通総額が約10億円。2年後に約2倍になったと仮定すると、年間流通総額約200億円。手数料モデルを採用し10%が手数料と仮定すると粗利が20億円。もろもろ引いて営業利益10億円程度出ると見積もり、成長分野なので高めのPERが置かれて500億程度も狙えると予想。あくまで国内のみで想定した数値であり、海外が爆発すれば上振れが見えてくる。

 

梅木 雄平 The Startup編集長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

うめきゆうへい

慶應義塾大学卒業後、サイバーエージェント子会社にてベンチャーキャピタル業務などに従事。複数のスタートアップ企業での事業経験を経て、2011年フリーランスとして独立後2013年に株式会社The Startupを設立。スタートアップ業界のオピニオンメディアThe Startup編集長を務める。著書に『グロースハック』がある
 

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT