――川内原発の審査における問題点をどう考えていますか。
一番の問題は、規制委の審査は深層防護、多重防護によって事故を最低限に抑えられるという想定があるわけだが、それが固定化することで、再び「安全神話」につながっていきかねないということだ。福島第一原発事故が想定外だったとされたように、100%安全だとか、0%の危険性だとか、考えることにはそもそも無理がある。
事故の可能性がゼロではないはずなのに、事故はありえないことを前提にしているからこそ、原子力防災・避難計画の策定が地元自治体に丸投げされている。
立地自治体はもともと、税収増や雇用増などの経済的メリットがある原発を誘致したいのだから、チェック機能は働きにくい。それなのに、自治体へ避難計画が丸投げされ、結果的に実効性の乏しい避難計画になっている。福島の教訓がまったく生かされていない。
米国では避難計画次第で廃炉も
原子力災害の大きさを考えれば、原発の再稼働を判断する要件として、実効性のある避難計画の策定は当然入れるべきだ。米国の原子力規制当局は避難計画を非常に重要視しており、避難計画次第で原発が廃炉に追い込まれる。ニューヨーク州のショーラム原発のように、州知事が避難計画を不十分として承認せず、一度も稼働せずに廃炉となったケースもある。
――自治体に責任が丸投げだと、実効性のある避難計画策定は難しいと。
川内原発の地元に限らず、日本の場合、各自治体が住民にどうやって放射性物質拡散状況などの情報を提供し、避難指示を行い、避難を支援するかといった計画は、まったくお寒い状態といえる。原発から30キロメートル圏外に避難するときに行う除染でも、実戦的な訓練ができていない。