「実効性ある避難計画を再稼働の要件とせよ」 川内原発審査の問題③広瀬弘忠・東京女子大名誉教授

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福島という大きな教材から学ぶべき、と川内原発周辺の避難計画を批判する広瀬名誉教授

結局、県のシミュレーションが出された結果、それがほとんど非現実的で役に立たないだろうというのがわかっただけだ。

――鹿児島県の伊藤祐一郎知事が、UPZの要援護者(高齢者や障害者など自力避難が困難な人)の避難計画に関し、「作らない」と発言したことが問題視されています。

UPZという圏内を作っておきながら、要援護者の支援はマンパワーからしてもできない、しかもそれは当然だという言い方をしている。が、いちばん援護が必要な人たちを避難させられない状況で、本当に避難計画といえるのか。

他県との協調体制ができていない

われわれには「福島」という一つの大きな教材がある。いろいろな失敗から学ばなければならないのに、失敗を避ける方法をあえて無視している。そういうやり方はあまりにも政治的というか、エゴイスティックという気がする。福島の教訓を生かすなら、30キロメートル圏だけでなく、40キロメートル、50キロメートル圏のことまで考えなくてはならない(福島事故では、30~45キロメートル圏の飯舘村に避難指示が出された)。

避難先は周辺の県へも拡大していくことが想定されるが、他県との協調体制はまったくできていない。警察や消防などが連携し、自衛隊の支援も組み合わせて、避難・災害支援態勢をどう構築するか。縦割りの弊害をなくし、統合的な指揮系統を整えることが必要だ。


 

中村 稔 東洋経済 編集委員
岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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