「火山影響評価は科学的とはいえない」

川内原発審査の問題②高橋正樹・日本大学教授

高橋正樹(たかはし・まさき)●1950年生まれ。東京大学理学部地質鉱物学科卒業。東京大学大学院理学系研究科博士課程(地質学)修了、理学博士。茨城大学理学部教授を経て、日本大学文理学部教授、現在に至る。専門は火山地質学、岩石学。
 川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)特有のリスクと考えられるのが、カルデラ火山の影響だ。川内原発周辺には桜島のある姶良(あいら)カルデラ、霧島周辺の加久藤(かくとう)・小林カルデラ、指宿周辺の阿多カルデラなど、巨大カルデラ火山が林立している。原子力規制委員会は2013年6月に自らがまとめた、「原子力発電所の火山影響評価ガイド」(以下、火山ガイド)に基づいて審査しており、川内原発については「運用期間中(核燃料が存在する期間)に、設計対応不可能な火山事象によって、本発電所の安全性に影響を及ぼす可能性について十分小さい」とした九州電力の評価を妥当と判断。立地不適とはしなかった。
 しかし、こうした審査については、火山学者などの専門家から疑問の声も上がっている。第2回は、火山地質学が専門で桜島火山・姶良カルデラなどの研究も続ける、高橋正樹・日本大学文理学部地球システム科学科教授に、審査の問題点について聞いた。

――規制委の火山影響審査についてどう評価していますか。

今回の審査の問題点を端的に言えば、できもしないことをできるかのように扱っており、必ずしも科学的とはいえないということだ。一見、科学的な評価をしているように見えるが、実際はそうではない。できないことをできるといえば、結果的に国民にウソをつくことになりかねない。新たな「安全神話」をつくるようなことがあってはならない。

問題は、火山審査の基準として、規制委が作った火山ガイドにある。中でも大きいのは、噴火の時期や規模を予測するために階段ダイヤグラムを使う点であり、もう一つが地殻変動の観測などによって超巨大噴火も予測できるとしているモニタリング(監視)だ。

階段ダイヤグラムで議論するのは困難

階段ダイヤグラムというのは、縦軸に噴出量を取り、横軸に時間を取って、噴出規模や噴出時期を予測する方法だが、理想的なものを作ることができれば役に立つが、実際問題として作るのが非常に難しい。噴出量の見積もりの誤差が大きく、年代測定も難しい。10人研究者がいれば、10通りの階段ダイヤグラムが作られる。そういうものだ。

ところが規制委は、階段ダイヤグラムによって火山活動の全体を予測できるという前提に立って、火山ガイドを作っている。それで原発規制の厳密な議論ができるのかは非常に疑わしい。

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