「リベラルであること」の難しさとは何か? 湯浅誠×乙武洋匡 リベラル対談(前編)

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 今の日本は、保守化、右派の影響力が高まっている。その背景には、韓国、中国への感 情悪化だけでなく、リベラル、左派の魅力のなさ、ストーリーのなさがある。今の日本のリベラルに、欠けているものは何か、どうすれば国民の心をつかむことができるのか。社会活動家として最前線で戦ってきた湯浅誠氏が、論客との対談を通じて、「真のリベラル」の姿を探る。
4人目の今回は、乙武洋匡氏。2007年4月から2010年4月まで杉並区立杉並第四小学校教諭として勤務し、3・4年生を担任。現在は、メディアを通して教育現場で得た経験を発信していく活動を柱とする論客である。
 

プラスの積み重ねで育てられた

湯浅:乙武さんの書かれた『自分を愛する力』(講談社現代新書)を読んだのですが、私と乙武さんの家庭には似たところがあるのです。私の兄は障害者なんですよ。乙武さんのお父さんも転勤拒否していたそうですが、うちのオヤジもです。オヤジは日経新聞の社員でしたが、転勤しなかったため同期でいちばん出世が遅れた。そんな父親をお互いがんで亡くしたという点も同じですね。

乙武:そんな共通点があったのですね。

湯浅:でも違うところもありました。乙武さんは自己肯定感が高いけれど、うちの兄貴はとても低かった。とにかく人見知り。特に小さい頃は、家に人が来るとコタツの中に隠れてしまう。私が車イスを押して外出しても、人のいない道、いない道を行きたがる。

乙武:確かに、それは相違点かもしれませんが、むしろ障害者としてはお兄様のほうが一般的なのかもしれません。

湯浅:私ね、小さい頃は自分が損しているとずっと思ってたんですよ。兄貴とケンカすると、たいがい私が怒られる。

乙武:ああ、なるほど。

湯浅:オヤジもおふくろも、どちらかというと兄貴のほうにフォーカスしてるから、私は自己主張しても損するだけ、みたいな感じがありましたね。でも私はそれでも、気がついたら「なんとかなるさ」という性格になって、この年齢まで来てしまったんですけど(笑)。

乙武:私には決定的に恵まれているところが2つあったんです。ひとつは生まれた瞬間からこういう体だったもので、親はもう一生寝たきりだろうと覚悟していたという点。だから僕が寝返りを打った、起き上がった、自分でごはんを食べた、字を書いた、それだけで大喜びですから、プラス、プラスの積み重ねで育ててもらえた。

湯浅:はい。

乙武:親って、生まれるまでは「五体満足であってさえくれれば」なんて言うくせに、そのうち「この子は運動ができない」「勉強ができない」とか、いろんなイチャモンをつけてくる(笑)。でも僕はもともとゼロベースなので、些細な成長でさえすごく喜んでもらえた。

湯浅:わかります。

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