攻めのLNG調達が東京ガスの転機に 東京ガスの村木茂副会長に聞く(後編)

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 かつてアメリカ駐在から帰国した村木副会長は神奈川で営業を担当するが、成績は振るわなかった。しかし原料を調達する部門に異動すると、一転して攻めに出る。ダーウィン、サハリンなどのLNGプロジェクトを次々に成功させた。ガス田の開発から調達まで、天然ガスのバリューチェーンが完成した。その道のりはどんなものだったのか、村木さんに話をきいた。

※前編:「個の力」を「組織の力」にする方法とは?こちら

営業で経験した“冬の時代”

三宅:村木さんは1972年の東京ガス入社以降、最初の成功体験を挙げるとするとそれは何ですか?

村木:原料の調達を担当していた8年間ですね。入社して最初に配属された研究所での9年間は、チーム作りには貢献しましたが、研究そのものはうまくいきませんでした。次のLNGの受け入れ基地は、大過なく運用することが成果でした。1994年にアメリカ駐在から帰ってきて、2年間は、神奈川県の産業用ガスの営業チームの部長をやっていましたが、市場の変化もあって、まったく売れませんでした。

三宅:村木さんにそんな時代があったとは驚きです。営業に向いていそうな感じがしますし。しかし営業で売れないのは本当につらいですよね。

村木:つらい。本当につらかったです。神奈川エリアというと、以前は超大物物件がどんどん取れていたのに、僕が担当になってからパッタリ取れなくなってね。“神奈川冬の時代”と呼ばれちゃっています(苦笑)。神奈川は京浜工業地帯ですから、産業用でいちばん大きなマーケットだったのです。毎年、最大の需要開発をしていたのですが、僕のときは需要開発が進まなくて、2番目に落ちたりしてね、本当にダメだった。

一方で僕はそのとき、厳しいけど組織のモチベーションだけは高めていこうと思ったのです。東京ガスには大卒以上の人と高卒の人が混在しています。高卒で地道に仕事をしている人たちが基盤を支えていますから、そういう人たちにもっとスポットライトを当てて、モチベーションを上げてもらおうとしました。

三宅:どうやってモチベーションを上げるのですか?

村木:たとえば、部長の僕と担当者が一緒に営業折衝に行く。部長が一緒に行くと、すごく喜んでくれるのです。お客さんと飲むときも、部長にはマネジャーが同席するのが普通ですが、担当者を参加させました。そうすると彼らは私がどういう会話をするのか一生懸命聞いているのです。私としても準備はこうやれとか、もうちょっと気を遣えとか指導するわけです。そういう意味では、この2年間は、一緒に苦労した連中が50人ぐらいいるのですが、面白かったですね。

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